いつの間にか、街はすっかり秋だった。
西部講堂前広場であったパレスチナ・キャラバンの天幕芝居のバラシを手伝いに行って、午後二時過ぎにもう西日が傾いているのに気付く。
三ツ星の屋根の向こうに鰯雲が浮かんでいる。
日が落ちればたちどころに涼しくなり、今年大阪から越してきたばかりの岡村ちゃんはツナギ一枚で凍えそうになっている(僕もツナギ一枚、しかも風邪ひきなくせにまだ寒いとは思わなかった。育ちというのは不思議なものだ)。
今日の昼間、烏丸五条の空一杯に秋特有の透明のような翳りをおびた様な水色が広がっていた。とくに烏丸通から北の方角に目をやると、うまく言葉にできない何か、この季節にこびり付いた情緒みたいなものがビルの谷間を縫って吹きつけてくる気がした。
いつもこの時期にはゆっくりと色づいては葉を落とす木々に影響されるのか、あらかじめ何かを失うことを約束されたような感覚を空気の中に見つけるのだけれど、
今年はそれが、いつもよりも自分の近くにいるのをを感じる。年齢のせいだろうか。
それともボロフェスタのせいだろうか。
ボロフェスタ。
まだ夢に見るのだ。
自分自身の弱さと甘えと不注意が起こした事態。ひとを傷付け、憤らせるということ。
信じてもらえないということがなんと悲惨なことかと今更ながら知ったあの瞬間。
スタッフの前で泣いてしまう自分の腑甲斐なさ。
その夜からの、翌日の、翌々日の、最終日の、スタッフの皆の顔。姿。声。ボロフェスタを救ったのは彼ら、彼女らだったと夢の中でさえ僕はいちいち思う。
出演してくれたミュージシャンたちのことば。誰もが温かかった。
友部正人さんのマネージャーさんが電話越しに言ってくださった、<音楽があるから大丈夫だよ>という一行がいまもリフレインする。
お客さん。どれほどの人が「楽しくなかった」のか、知らない。bbsの書き込みを読めば目も胸も胃も、痛くなった。
それでも、ゴミブースの前で回収役をしていた僕に空き瓶やトレイを渡してくれた彼の笑顔、一日目の帰り際に入り口の横断幕の写真を撮っていた女の人の横顔、
そして、ステージの上、歌いはじめようと椅子につく直前の一瞬に見た、皆の顔。
エンドロールのメッセージが流れたときに起きたあの拍手。
その辺りで、目が覚める。ときにはどこかが端折られたり、最後までたどり着かなかったりする。描写が細かだったり、混ぜ合わさっていたりもする。
それでも、いまだに夢に見続けるのは余程のことだ。
主催メンバーのなかでも、いや、たぶんスタッフ全員のなかでも、こんなにも未練がましく引きずっているのは僕だけだろう。我ながら情けない。そこで反省を得たなら、強くなるべく努力をすればよいだけなのに。
たった4日間の出来事のなかに、あまりにも、忘れてはいけないことが多すぎたのだろう。
そしてそれを明快な教訓に還元できるほど、僕の頭は機能的でも建設的でもないのだろう。
ひとつだけ、単純な真理を理解した。
音楽は、歓喜だということ。
それは昏いメロディも悲しい歌詞も、明るいハーモニーと快活なビートもまったく同じで、
野心も上昇志向も自己顕示欲もあるいは自己憐憫も理解されたいという願望もこの歓喜の前にはまったくの無用で無力で無意味で、
ただ音楽が素晴らしい強度で鳴らされる瞬間、そこにはひとつの歓喜があるだけだということ。
僕は知った。
うたを歌うということは、生きて、泥にまみれて恥も外聞もなく生きて、歓喜を告げる役割を果たすということだ。
ボロフェスタが終わって立て続けにやった4本のライブは、どれもが圧倒的な喜びのなかにあった。音楽の中に身を置くのがひたすらに嬉しかった。
このことを、僕は二度と忘れないと思う。
今週末のミナミホイールも、ベア−ズのハロウィンも、来月のギューン祭りも、audio safariのレコ発も(遊びにいった京都編もとても楽しかった)、年末にある怒濤のライブラッシュにも、来年もその次の年も、
ソロでも、best friendsでも、あら恋セットでも、どんな形態でライブをしようとも、二度と忘れないと思う。
触れたものからすべてが奪われてゆくーとしても、
あらかじめ失われると約束されているーとしても、
自分の内側から来るもの、沸き出して涸れることのないものは、そう簡単には奪い尽くされない。
その泉が自分の中にまだあることに、
耳を貸してくれるひとがいることに、心から感謝する。
(この日記、相当にかたい。読み返してすこしうんざりするけれど、今日はお茶を濁すこともせすにこのままにしておくことにする。だって、これは本当に思ったことだから)
今月のライブ。
・2007年10月26日(金)アメリカ村SUNHALL
『MINAMI WHEEL 2007』
ゆーきゃんwith his best friendsは、20:30からの出演となります。
http://funky802.com/minami_2007/・2007年10月26日(金)南堀江knave
『MINAMI WHEEL 2007 EXTRA EDITION:号外!愛されちゃってシンガーソングライターズWEST!』
出演:大森ゲンキ(from残像カフェ)
原田茶飯事(fromクリームチーズオブサン)
KEEWO
林良太(ミックナッツハウス)
ゆーきゃん / and more…
開場 23:00 / 開演 23:30
前売 \2,000 / \2,500 (共にドリンク代別)
*MINAMI WHEELパス持参の方は\1,000となります。
・2007年10月29日(月)京都 MUSEHALL
『京都ミューズの激情ホイール!!〜MINAMI WHEEL EDITION〜』
出演:Good Dog Happy Men
ロボピッチャー
アナ
LOVELOVELOVE
ゆーきゃんmeetsあらかじめ決められた恋人たちへ
開場 :18:00 / 開演:18:30
前売 \2,000 当日¥2,500 (共にドリンク代別)
*出演順2番目(19:15〜)、『MINAMI WHEEL 2007』のパスか、10/12・10/24『京都ミューズの激情』の半券をお持ちの方は、入場時1ドリンク代がサービスになります。
・2007年10月31日(水)なんばbears
『reconstruction of the underworld vol.3』
出演:ULTRA Jr
BOGULTA
ACID EATER
ゆーきゃんmeetsあらかじめ決められた恋人たち
開場 :18:30 / 開演:19:00
前売:1500円 / 当日:2000円(1drink代不要)