言いたいことはある だが何だったか思い出せない
それを歌うためにステージに上っていた
この無為な日々を誰が赦すだろう
僕を抜きにして誰が赦すだろう
鏡のように足下のモニターを見つめ
誰よりも小さな声は師走の黎明のように空疎
無限の感情と環状の夢幻と
とにかく
謳えないことばを こぼれ落ちる音像を 終わりの終わりの始まりを
冷たくあたたかくたたえる夜の果ての闇のように
さながら叫ぶためにステージに上っていた
この無為な歳月を誰が赦すだろう
この無為な鼓動を誰が聞くのだろう
幾星霜を積み上げて積み上げて流れ去ったあと滑稽に散らかる部屋の片隅
僕は逃げないそれぐらいしか後はできないけどと書いた23歳のノートの筆跡
ステージを下りれば小さな声は掻き消され
整然としないことばたちは悲しみと苛立を呼ぶだけ
結局は何度となく逃げた足跡は
ただそのままで
何度も何度も繰り返してきた呼吸の名残と
何度も何度も繰り返すであろう呼吸の可能性を
ただそのままで
いつか惨めさを喜びに
愚かさを優しさに変えることを願うようになった
知るようになった
そう
君を抜きにして誰が許すだろう
僕を抜きにして誰が歌うだろう
ただそのままで
同じほど無為な夜と朝とが流れ尽くした後で
まだ小さな声がステージの端に見つかるのなら
僕はそれを拾って 一切を許したい
ただ師走の黎明のように横溢することばに出来ぬ何かをいつか言い当てたいと
想っている