2008年04月09日

4月8日

このちいさな街の目抜き通り
千度も顔を合わせた古い友人がここに来るなんて
あの頃は誰が想像しただろう

星というにはあまりにみっともなくささくれだった宝石のような音楽を奏でる人間の倒れた日
僕らは彼をまた一年追い越した

数千年前に地位を捨て妻子を捨て世を捨てて悟りを探しに出たという流浪の人間の生まれた日
僕らはどうやらそのときの彼と同じ年齢らしいのだ

尋ねてきた友人を改札まで送り届けて降りてゆく帰り北口階段の踊り場で ありきたりの感慨がふと胸を衝く

明日のことを知りたくて ひとはこんなにも精緻なダイヤの上に列車を走らせ続けるのだろうか
だとすれば
せめて今日だけは誰もその網に飛び込んで絡めとられていませんように

居酒屋で流れたのはあの街で生まれたメロディ
あそぼうよ 魚ごっこ と またもここにもういない人間がスピーカーの向こうで歌う

あの頃は誰が想像したろう
この日ここで僕が生きた何人とことばを交わし
秒速一秒の途方もないスピードで過去を越えてゆくのかを
僕には想像がつかない
いつか僕の去った世界でこのありきたりの感慨を抱く誰かの日々を
たぶんそれは誰にも想像され切らず ちいさな街の目抜き通りに幾つも転がったまま
春風に乗り花粉に混じって人々の鼻をくすぐり続けるのだ
posted by youcan at 06:02| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする