2008年10月27日

阿佐ヶ谷1番街の猫

彼は走らず、見上げることもせず、ずっと俯きがちに路面を見つめて、しずかに歩いていた。何年も前、きっと首輪をなくしたその数ヵ月後から、餌をさがすために必要だった左右の動作だけ(もしかしたら後ろから迫る脅威を確認するために振り返るということはあったのかもしれないが)を重ねてきた−そんな物憂げさで、頸を動かす。私が追い越したときも彼はひどく緩慢に右に注意を振り分けながら上目遣いでちらと貧相なシルエットを確認し、すぐに看板の足元に興味を戻すのだった。

この猫のふてぶてしさの中には恐ろしいほどの人間擦れがあり、あるいはだからこそこんなふうに人を人とも思わない(もちろん自分と同じ猫だとも思っていないだろうが)態度をとれるのだろう。もしかしたら飼い猫だったのかもしれない。かつての暖衣飽食、かつての愛された日々を、こいつは懐かしんだりするのだろうか-そんなことを思いながらもう一度眺め回していて、ふと気付いた。
この猫には尻尾がない。付け根から10センチ、やっとのことで地面に向けて垂れ下がることができる長さの箇所でぷっつりと切れている。それは一切の恣意的な動きに支配されず、ただ歩みの中で足の離陸と着地の衝撃をわずかに受けて揺れているだけだった。

猫の尻尾が思考や感情を表現するというのは有名な話だ。そういえば昨日もそんな会話をした気がする−ねえねえ、などという甘えた呼びかけは絶対に手よりも尻尾でするべきだ−
そういうことなのだろうか。目つきの悪い昼間の猫たちの中でも最悪に不敵な顔つきをした、阿佐ヶ谷一番街の退屈なハードボイルド。きみは猫的な感情の多くを切り落とし、そのこころは万有引力を幾分拒むことを体得(まさにこの二文字はぴったりな表現だ)して、そして目覚めから最も遠い昼下がりに飲み屋街の看板の下を残飯を(さほど期待もせぬまま)探しあるいているのかい。もちろんそんな問いかけには一切構うそぶりもなく、猫は建物の隙間に消えた。そのすぐ隣、瀟洒なバーのガラス扉には"GAMES,SPORTS,MOVIE,and MUSIC"と書かれていたような気がする。



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2008年10月20日

HERE

二日間を終えて、
奇妙な感慨がある。

僕は東京に来たのだと思った。

ボロフェスタで強烈に自分のルーツがここにあると感じたその後に、それと相反するような感慨を得たことはおかしな話だけれど、とくに自分の中で矛盾はない。


僕は僕の足跡を愛さなくてはならない。
汚れたもの、乱れたもの、恥ずべきものも含めてだ。

と同時に、いま自分の立っている場所にも強く強く「YES」と書き付けなくてはならない。


音楽があってよかったと思うよ。
音楽がなかったら、とっくに諦めていた。
あそこに居たことも間違いではないし、
ここに居ることも許されているんだ。
すくなくとも―
僕の内側や周囲に横溢する音楽たちが、それを証明していた。


素晴らしく鮮やかに明暗を奏でたビイドロ、沢田君、ワッツーシ、pogs、クリトリックリスに最大限の賛辞を送りたい。
「型にはまっていると思ってる。だから壊したい」と朴訥に言い切ったYUEYの冒険と姿勢に敬意を表したい。

フライヤ作成から打ち上げまでを手伝ってくれたミシオさん、はなこさん、カンノさん、よしむ、
いつも一緒にライブを作ってくれる池永さん、黒瀬さん、山本さん、岩橋君、G、岡村ちゃん、そして健太郎、
昨日つまらない話を長々と聞いてくれた剣くん、
「おまえの音楽はわからん」と言いいながら観に来てくれた父(柿はお客さん、鱒寿司は健太郎にあげました)、
月見ルとHOME、
そして貴重な時間を共有してくれたお客さんに、
ただ感謝したいと思う。


これからもどうぞよろしくお願いします。
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2008年10月18日

EVERYDAY IS TODAY IS THE DAY IS THIS

ボロフェスタのお客さんからのコメントやメッセージは、とても嬉しい。

批判的になること、引いた目で物事を見ることは、じつは熱狂的で妄信的になることと同じくらい簡単なのではないかと最近思うようになった。

ほんとうにしなくてはならないこと、
そして僕がいちばんしたいことは、
"さがす"ことだ。

そこには、まなざしが要る。
そこには、探る手が要る。
偽物もあるし、壊れ物もある。
棘や毒があるものもある。

それでも、
日々のがらくたの中からその向こうへ開く扉をひとつひとつ検証してゆくことは、やめてはいけない。

最終日の夕方くらいからずっと思っていたのに、ひとつ肝心なことを書きわすれていた。

ありがとうございました。


さて、今日から二日間はこれ。

今日の月見ルは、支離滅裂で牽強付会で、とにかく抱腹絶倒の夜になるはず。このブッキングの滅茶苦茶さを知っている人には「バイアスを取っ払って」なんて言えない。むしろバイアスをそのままに、とにかく何でも目をつぶって食べてみるような気持ちで遊びに来て欲しい。

あさっては、YUEYとの2マン。東京に来てからまだ半年しか経っていない、下積み真っ最中の僕が2マンライブに誘ってもらえるなんて恐れ多いことこの上ないけれど、とにかく精一杯やる。ちなみにセットリストはソロ、坂本健太郎(ピアノ)とのデュオの2部構成にする予定。とくに健太郎とのデュオ、ボロフェスタでは我を忘れるようなライブが出来たので、あの感覚を渋谷でも再現させたいと思う。

(予約頂いているかた、返信滞っていてごめんなさい。ちゃんとメールは届いていますのでご安心ください。取り置き、しておきますね)


・2008年10月18日(土)青山月見ル君想フ(http://www.moonromantic.com/)
"MEI-AN めいあん"

出演
ワッツーシゾンビ
pogs(佐々木良 from キンモクセイ+伊藤健太 ex.ゲントウキ+吉澤響 fromセカイイチ)
ビイドロ
沢田ナオヤ
クリトリック・リス
ゆーきゃんmeetsあらかじめ決められた恋人たちへ

開場:18:00/開演:18:30
前売:2,300円/当日:2,800円 [要別途1Drink代\500]


・2008年10月19日(日)渋谷HOME(http://www.toos.co.jp/home/
YUEY Presents "室内MUSIC 〜僕らの二日間戦争〜"

出演
YUEY
ゆーきゃん special set for thee indoor music

開場:18:30/開演:19:00
場所 HOME
料金 前売:2,000円/当日:2,500円 [要別途1Drink代\500]

1
ボロフェスタにかまけてライブ情報の更新も滞っていた。月曜くらいには最新情報を掲載しようと思っている。11月も面白いイベントが盛りだくさんなので、どうぞお楽しみに。


あ、そうだ。
MY DISCOのアルバム、無事発売しました。
初回限定、OLIVE OILのREMIXは必聴ですのでお早めに!
http://www.junklabrecords.com/news.html


posted by youcan at 13:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々、時々雨 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月15日

BOROFESTA is YOURS

京都に戻ったその日の夜に骨折。携帯で会議の議事録をまとめながら歩いていたのだけど、滑って転んだだけで骨が折れた。カルシウムが足りないのだな、と思った。

風邪をひく。この街の秋特有の、気温差を忘れていた。週末は一日中鴨川にいたこともあって、さらに悪化。咳も止まらず、イベント終了後にはほとんど声が出なくなっていた。

「日本一狂ったフェス」の主催者の生活にはリズムなんてあるはずもなく(あるとすればひどく複雑なポリリズムだ)、毎年のことながら満身創痍でなんとか乗り切った。


ボロフェスタは不完全なフェス。毎年いくつもの問題点を爆発させながら進行する。今年は特にいままでのメソッドが通用しなくなったこともたくさんあった。特に僕の無能力や思慮不足に起因する不手際も多くって、そのせいで迷惑をかけたスタッフや戸惑わせたお客さんには、本当に申し訳なく思っている。

でも、(もちろん責任は強く感じた上で)きみたちならこのボロフェスタをきっと楽しむことができる、と無責任に信じていたのも確かだ。僕らが一日ごとにボロフェスタをよりスムーズで狂ったものにしていこうとする努力と平行して、みんなが徐々に心の姿勢をくずしてゆくだろうということは疑わなかった。実際に8日のあいだ各会場を行き来して話したり隣に座ったりしたひとたちの顔は、気楽で貪欲でとても頼もしかった。


ボロフェスタは会場の名前ではなく、
フェスの名前であり、人間の名前だと思う。
人間の呼吸だと思う。

それは僕の手を離れていた。


ゆーきゃんの出演さえ、ボロフェスタに必要な1つのピースとしてとらえるようになっていた今年、最終日の鴨川でも、ほんの一曲だけ歌った。がらがらの声で歌い動かない手で弾いたY.S.S.O.。あの四分間だけがボロフェスタを僕が占有したひどく迷惑な時間だった。
posted by youcan at 11:28| Comment(1) | TrackBack(0) | 日々、時々雨 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月06日

10月6日

ボロフェスタが、始まる。
(こう始めて、この書き出しでの日記が一年に一度はあるのだと思い、奇妙な感慨にとらわれた)

いまから新幹線に乗って京都へ向かう。
(飛行機も眠ってばかりいたからなんとか大丈夫だったけれど、この時間帯の平日の新幹線はサラリーマンで一杯だ。品川からの自由席では座れないかもしれない。)

このフェスは、完全からはほど遠い。
そこに面白さがある。
(これはDO ITに行って思ったことでもある)
毎日、生成してゆくイベント。呼吸するイベント。

ボロフェスタへは、
楽しませてもらいに来て欲しくはない。
楽しみに来て欲しい。

8日間、時間のあるときに来たらいい。
お金がない人は鴨川だけでもいい。
ここには音楽があって、喜びがあって、
たぶん、きみの探している何かがあると思います。

http://www.borofesta.com


posted by youcan at 06:38| Comment(1) | TrackBack(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年10月02日

飛行機

いまさらながら、飛行機に乗るのが怖い。
普段は滅多に乗らないので差し支えなかったのだけど、去年ネストから急ぎに急いで羽田に向かい、飛行機に乗ってから、気付いた。

僕は、飛行機が好きではない。

エコノミークラスにしか乗ったことがないからだろうか。

ちいさな鉄の船に乗って、無限に近い空の中でじっとしている。はじめはひどく滑稽で、つぎに少し惨めな気分で、だんだん恐ろしくなってくる。

落ちるのが怖いとかいうのとはちょっと違う。
おなじように広大でも、海の上だとそんなふうには思わない。
どうしてだろう。

でも、どんなに好きじゃなかろうと、新幹線で福岡に行くよりもずっと安いのだから背に腹は代えられない・・・今日は夜更かしして(ちょうどボロフェスタの仕事やレーベルの作業などが溜まっている)、明日はただ眠っていよう。目がさめると福岡。ずっと行きたかった街。それでよい。それを楽しみにする。


あ、明後日の「西風」、出演順の問い合わせを何件かいただきました。出番は2番目です。17時スタートなので早めに来てくださいね。






posted by youcan at 19:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々、時々雨 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする