2003年だったろうか、彼は二枚目のアルバムをリリースし来日。各所をトクマル君と廻っていた。
京都はアンデパンダン、サポートが僕。
5時半過ぎくらいに会場へ着くと、
彼はリハを終えて、
楽屋のベンチで仰向けに眠っていた。
赤いキャップを被ったままだった。
その日は僕はとても不甲斐なく、
演奏も集客も、ツアーサポートとはとてもいえないようなものだったので、終演後も話しかけることができなかった。
あなたのファンです、たぶん同い年だと思います、
また日本に来て下さい、いつかまた一緒に!
あのとき言えなかったことは、
もう二度と言えない。
-死んでしまったら、歌うこともできないよ。
友人から送られて来たメール。当時彼女はまだ僕と面識がなかったのだけれど、彼の歌が好きで、あの夜、大阪からそのライブを観に来ていたという。
彼女もうたを歌っている。
僕も歌っている。
でも、彼はもう歌えない。
それが確かな、どうしようもなく確かな事実だということ。
今日は、彼の歌だけを聴こうと思う。
もう歌うことのできない人の代わりに、
CDが、ステレオが、スピーカーが、空気が、
彼の歌を、歌うのだ。
それを胸いっぱいに吸い込むことが、
悼みだと、信じる。