2009年07月26日

塩屋

塩屋駅に降りると、目の前が海だった。
正確には車どおりの多い国道が駅の南側、線路に沿ってを走っており、海はその向こうだったので、目の前というよりも背中といったほうが正しいのかもしれない。

駅前の細い十字路にはちいさなコンビニが一軒、魚屋、定食屋、喫茶店にケーキ屋、本屋と美容院といった具合。左に折れてほんの少し歩くと、ちいさな橋があり、ちいさなが流れがある-塩屋谷川というらしい。中国山地が漸く始まりだす(あるいは終わる)北の山から瀬戸内海に流れ込む、こういう流れがきっと無数にあるのだろう。用水路のようにコンクリートで舗装されてはいるけれど、川の名前-「谷川」という呼び名は、昔これがどういう流れだったのかを偲ばせるひとつの材料たりえる。


この川に感動したことは、その清らかさと、流れだった。いや、清らかといっても、その日は雨が降ったり止んだりの天気のせいで随分と増水し、濁っていたのだ。だから、ただしくはその「濁りの清らかさ」というべきだろう。カフェオレにも似た色水、けれどその濁流には不純物がほとんどなかった。飲めるんじゃないかと思ったほどに、あんなにも濁り水が綺麗に見えたのは久しぶり。あとで調べると、地元の小学生が月に一度掃除をしているのだとか。ゴミがほとんど混じっていなかったのは、そのおかげだったようだ。さて谷川は橋をくぐりさらにその先、国道の下をくぐって海に注ぐそのだけれど、ちょうどその真下あたりで海から寄せる波と衝突し、時々大きな波のあおりを受けて逆流する。波と一緒に国道を潜ってくる風は汐の匂いがする。このカフェオレは少し塩辛いはずだ。よく見ると端の欄干は錆びている。その脇に立つ標識の柱も、塗りが剥げたところから少しづつ赤茶けはじめている。

水のある街は、水の生きている街は、いい。
そう思いながらすぐ傍のケーキ屋さんに入って、休日の午前をささやかに楽しむおっちゃんの隣のテーブルでレアチーズを食べた。カフェオレは止めにして、ホットコーヒーを頼んだ。
塩辛くはなく、ごく平凡な苦味だった。
初めて降りる駅にも、どこかに忘れてきたような懐かしい休日が落ちていたりするらしい。




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2009年07月20日

十和田湖

十和田湖には、龍がいたのだという。

八幡太郎という男が友人と二人して釣りに出かけた。苦労して岩魚(姫鱒だったかもしれない)を二匹捕まえ、焼いて食べようということになった。友人が薪を探しに行っている間に、腹が減った八幡太郎はまず一匹食べる、すると却って猛烈に空腹に苛まれもう一匹をも食べてしまう。食べ終わると今度は激しくのどが渇き、湖の水を獣のようにがぶがぶ飲む。ようやく飲み終えたちょうどそのとき、友人が帰ってくる。

骨だけになった魚と這い蹲った自分の姿、そして呆然とする友人。
あまりの恥ずかしさに打ち震えた八幡太郎が湖を覗き込むうちに、がじがじと鱗が生え、身の丈は大きくなり、ついには龍になってしまったのだという。

その後、湖のぬしになった八幡太郎はこれまた理不尽にも関西のどこそこの寺で修行した僧にその座を奪われ、追い出されてしまうのだが-


とにかく、そんな十和田湖は、静かな湖だった。
肝心のライブは大雨でお客さんは一握りしか居なかったけれど、雨の向こうには龍がいたかもしれない。
あるいは、湖のなかに居たかもしれない。
聴こえただろうか。
もうどこかに行ってしまったのかな。


よいところだった。また行けたらいいな。
スタッフの皆さん、いぶきのお二人、サカモトくん、雨の中お疲れ様でした。ありがとうございました。


あしたは久しぶりにサンレインで投げ銭ライブ。
十和田湖でも一緒だった小田晃生くんはDVD発売記念、かねてからお店でやってほしかった沢田ナオヤくんを誘って三組で。8時過ぎからです。仕事が早く終わったかた、ぜひ。だらだらしに来てください。
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2009年07月15日

梅雨が明けて

夏が来た。

高校生の頃、「陽射しの中にいるあなたには死相が浮かんでいる」と言われたことがあるのだけど、ボロフェスタを始めた頃から炎天下を駆けずり回ることが増えて、ちゃんと日焼けもするようになった。

いまではeeteeのスタッフに「いつも浮浪者みたい」と笑われたり、サンレインの経理の人に「うちの会社には虫取り行くみたいな格好で来てる人がいる、と弟に教えた」と言われたり、偶然会ったアキラさんに「なんで今日ビーサンちゃうねん!」と怒られたりする。

先日、6年ぶりくらいにライブでご一緒させていただいた、SAKANAのポコペンさんに「昔に比べてフランクになりましたね」と言っていただいた。

昔もそれほど頑なだったつもりはないけれど、
たしかに今のほうがおおらかになったかもしれないな。



ゆうべ、ひさしぶりにただ「観に行く」ためにライブに行った。
三上寛さんと今井和雄さんのデュオ。
壮烈。壮絶。歌舞伎の大見得の後ろで落雷があれば、あんな感じかもしれない。


三上さんとは9月にご一緒させていただけることになったので、挨拶をして帰ろうと思っていたのだが、恐れ多くてすごすごと退散した。いや、正確にはおなかいっぱいでもういいや、と思ったんだ。


とうめいロボやポコペンさんの歌に時折「降ってくる」奇跡的な瞬間にも鳥肌が立つけれど、三上さんや池永さんが見せてくれるような、自分の立っている場所をえぐり取って見せ付けるようなあの場面には、ただひたすらに打ちのめされてしまう。
それは土の匂い、深い闇と閃光の匂い、そして夏の匂い-しかも、どこか北国の夏に似た匂い-がする。


そういえば土曜日は青森・十和田湖だ。初めての場所に行くのはいつも楽しみ。



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2009年07月12日

おめでとう、生きよう

スーパーノアの初めての全国流通盤が出た。
発売日に新宿のタワーレコードに行くと、大きくPOPが掲げられて、隣に並んでいた空中ループの2枚目と一緒に「京都!」という文字が目を惹いた。


あら恋のライブ盤も同日発売。これが本当に素晴らしい。昨日はeeteeに出てもらったけれど、最近のあら恋のライブは神懸る瞬間さえあって、この凄さが日本中に伝わってゆけばいいと思う。


さらには、RATVILLEのファーストも同時リリース。彼等とはじつは京都を出てから初めて絡んだのだけど、音楽もひとも柔軟かつハードコアで、デビュー作がこんなにも力に満ちていることがとてもうれしい。


CDが売れない時代と言われてしばらく。風当たりはいよいよ厳しくなっている気がするけれど、その逆風を衝いて帆を揚げる友人たちの頑張りを目にすつと、本当に励みになる。


おめでとう。ありがとう。



行きて汝のなすことをなせ、と、イエスはユダに言ったそうだが、
それはきっと、きみを見捨てたのではない。


生きるのだ。
きたない足跡をたくさんつけて、はだしで舞台をふらふらと歩き回りながら、私は私のうたを歌おう。

昨日のように、あんなにもよろこびに満ち溢れた夜にもまだ私の居場所はある。声がとどく距離に誰かがいる。よかった。
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2009年07月08日

eetee

eeteeまで、あと少し。

music from the marsと一緒のステージは、ほんとうに楽しいです。
毎度の事ながらみんな多忙のため、先のライブを決めるのにも苦労します。次回ライブはいつも未定。

お時間のある方はぜひ観に来て下さい。
出演時間は23:00ごろからです。
終電ぎりぎりあります。帰れない方は夜通し遊びましょう。

http://eetee.tv/


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