振り返るに値しない一年もある。おまえは何をしてきたのだと風が問いかけるような、くだらない季節もある。2009年はとにかくたくさんの出来事があり、振り返るだけでもう一年くらいかかってしまいそうだ。花は咲いていない。実もなってはいない(店はなくなった)。けれど、僕はあちこちで目にしたように思う―寒空に沈黙しながらも静かに、ある方向に向かっていっさんに伸びてゆく枝、夏あんなにも繁った葉を落としたその後で、春の予感を空気の中に探しながら新芽をどこかに隠した葉柄、そしてひたむきに年輪を重ねる幹。人間、場面、作品、今年出会った景色はどれもそんなふうだった、そして僕が求めていたのはまさにその景色だったのだ。
来年がどうなるか、未来がどうなるか、まだ何ひとつ分からない。裏切られた約束、満たされない期待、こんなはずじゃなかったことは山のように現れるだろう。恨みや妬み、焦りや衝動に取り込まれないために、こころを強く持ち続けなくてはならない。誰かに与えられる、大きな神話の嘘を見抜くこと。自分自身の、僕ときみの、僕と太陽の、ものがたりを紡ぎ続けること。根を張り、ひかりを空気に換え、呼吸を歌に変え、ただそこに居ること。右肩上がりの成長ではなくて、死に向かってなお静かに成熟するように、豊かに日々を送ってゆきたいと思っている。
2010年もどうぞよろしくおねがいします。