仲立売通の歩道には色つきレンガの石畳が敷かれている。底の薄っぺらい、履きつぶした靴から上がってくる冷たい感触。もう過ぎ去ったと思っていた、真冬には慣れ切っていたはずの寒さに、今日は膝から下をどっぷりと浸しながら歩いた。
人間は寒の戻りに驚いたり天を呪ったりするだけでよいけれど、気温が低いと身動きすらとれなくなってしまう虫や爬虫類にとって、せっかく地上に出てきたあとの低気温はほんとうに死活問題だろう。
花はどうなのだろう。桜が咲くためには冬の寒さが不可欠らしいが、ここ数日の「花冷え」を肝心の花はどんなふうに感じているのだろうか。
そういえば、実家の茶の間には四月半ばまでこたつが出ていた。田起こしが始まり、水量が増え始めた疏水にそって歩くときにはまだ厚手のコートを羽織っていた気がする。土手に並ぶ桜は歩く日ごとに蕾から三分咲き、五分咲きから一斉に満開、そしてあっけなく散ってしまったその後で田圃いっぱいに水が張られ始める。
去年は京都でも東京でも、山形でも桜を見た。三都市―いや、翌日には盛岡でも見たので四都市―桜前線を追いかけるように移動したのだったが、今年はこの週末、津へゆく。例年通りだと、ちょうど四月上旬が見ごろになるようだ。この寒さで少し遅れたかもしれない。お花見スポットへ出かけてゆくのはただ人ごみに紛れてうんざりするだけなので遠慮しておくけれど、去年の山形、児童公園のそばの並木みたいな場所があると嬉しい。調べてみようかしら。