2011年05月29日

雨のこと

 雨の日に、窓を開けっ放しにしておくのが好きだった。網戸越しに桟を越えて、板の間やフローリングに降り込む雨が好きだった。開けっ放しにした窓から吹き込む風が好きだった。そんな時間をひととおり楽しんだ後、床にできた水たまりをタオルで吸い取るのも好きだった。雨の日の昼間の暗さ、でもけっして闇ではない暗さが好きだった。

 はじめて京都にやってきた年の梅雨には、東山丸太町を少し上がったところにある安いワンルームマンションに住んでいた。雨が降り続いた日の晩、予定がないときは鴨川まで歩いて、普段のおだやかな表情とはがらりと姿を変える泥水の流れを観に行った。
 激しい雨の降る平日に、京都御苑の南側の門から入ってゆくと、あの幅広の砂利道上にほとんど誰もいなかったりすることがある。傘をほんのすこし下ろすだけでびしょぬれになってしまうのだけれど、その間に聞こえるのは雨が木々に大地に落下する着地音だけ。世界のすべてに細い縦糸を下ろすような画像と音の向こうには、六月の緑が雨にぬれてひときわ鮮やかさを増していた。その時間の贅沢さといったら、言い表しようがない。

 例年より十日も早く梅雨入りしたと言う今年。雨の降る日は放射線の量もあがるという話があちこちで聞こえる。どうせ濡れるのだからと、いつもはこの時期をビーチサンダル一個で済ませるのだけれど、今日は同居人が長靴を貸してくれた(伝え聞く京都市内の線量情報について、真偽はわからないけれど、用心するに越したことはない、と思った)。雨におびえなくてはならない世界は、けれど、どう考えても狂っている。雨に歌うことも、雨の中で泣くことも、しばらくはお預けにしてもいい、ただし、それらの歌詞を「昔はよかったね」と語り継ぐ材料にさせてたまるものか、そんな風に思いながら大きな傘を閉じたり開いたりする。雨が恋しい。


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2011年05月24日

記録とお知らせ

5月22日 タワーレコード京都店
ゆーきゃん×岩橋真平(スーパーノア)×G(OUTATBERO)

1. 空に沈む
2. エンディングテーマ
3. 明けない夜

 午後三時からの開演に向けて、正午前にまず岩橋と待ち合わせて、サンレイン倉庫にて練習をする。三度ほど合わせ、まあ大丈夫だろうということにして、出発。くもり空の下、タワレコまで歩いた。御池通の緑がとても美しい。五月のひかりを受けて、アスファルトと空を背に、浮き出てくるようなあの感じ。
 午後一時過ぎにタワレコへ到着。ハセケンもほどなくしてやって来た。タワレコの宮崎さんに控え室代わりのバックルーム、そしてお店の入っているOPAビル全体の従業員休憩室などを案内してもらった。折しも昼の休憩時間だったのだろう、従業員休憩室は人で溢れ返っている。ファッションビルらしい、まさに「ショップ店員さん」と言った風体の女性たちがずらっと並んでお弁当を食べたり、雑誌を読んだり、煙草を吸ったりしている様にただ圧倒されてしまった。
 リハーサルはハセケン、ぼく、そしてOUTATBEROの順。ベロは今日に向けて弱音/ローファイ・セットを用意して来てくれたそうで、Gはフロアタムを改造したカクテルドラム(スネアとバスドラムの役割を果たせる)にハイハット、ビンゴはトレードマークのフライングVではなくて、セミアコを持って来ていた。(余談だが、ベロの四人も休憩室の景色には驚愕を隠せなかったらしい。あれは、ぼくらの知らない世界だよねえ、ほんとに)
 午後三時、ほぼ定刻通りに開演。当初は宮崎さんにひとことイベントの説明をしてもらってからライブを始めようと思っていたのだけど、直前になって、まず音を鳴らして人の気を引く!という作戦に変更した。OUTATBEROの四人が椅子に腰掛けて音を出し始めると、フロア中に散り散りだったオーディエンスが続々と集まりはじめた。
 静かで緊張感あふれるベロの演奏、淡々としながらも強靭なハセケンの歌、嬉しかったのは、三組の演奏を通してお客さんが驚くほどニュートラルに聴いていてくれたことだ。演奏時間が短かったということもあるのかもしれないが、あまり一緒にやる機会のないベロとハセケン、双方のファンがそれぞれ集中して耳を澄まし、じっと演奏を見つめていた。とても素敵だった。

 ぼくらの演奏は、急遽Gにもドラムで入ってもらって三人編成で。ふたりともいい仕事っぷり。リハーサル後、緊張していたのか「ビール飲んでくる」と街に繰り出した岩橋は、観に来てくれたマドナシ(キツネの嫁入り)に「がんちゃんって、いいベーシストやってんな。ただの酔っぱらいかと思ってた」と揶揄されていた。

 MCでも話したのだけれど、CD屋さんが買う場所だけでなく、遊びにくる場所になればいいとずっと思っている。タワーレコードは試聴機も多く、POPもコメントも充実していて、居るだけで楽しくなる。そんな場所の楽しみのなかに、生演奏という項目が加わると、あの空間はますます素敵になるのだと実感した。しかも、よくある「アルバム発売後のインストアライブ」ではなくて、こんなふうにコンセプトに基づいた企画が出来たことも、なかなかに意味があったのではないだろうか。お話を持ちかけてくださった宮崎さんには本当に感謝。ありがとうございました。もちろん来てくださったみなさんも!



 (以下追記)ゆーきゃん×タワレコ京都店のキャンペーンは、六月九日までやっています。対象作品をお買い上げの方全員に、ゆーきゃんがセレクターをつとめたコンピレーションCD-Rをプレゼント。90%全国未流通のレア音源集です。
 また、タワレコでのインストアはもう一本あります。六月九日、今度はNU茶屋町店にて。こちらも入場無料ですが、上記のCD−Rと一緒に付いていてくるイベント参加券が必要になります。出演はTHEラブ人間、the NEATBEATS、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団、LUCY & THE LIPSTIX、ゆーきゃん×JOJO広重×スハラケイゾウ。日付に負けてしまわないよう、大阪のロックな先輩方にお力添えを頼みました。詳細は下記リンクでご確認ください。

http://tower.jp/store/event/4026
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2011年05月22日

HOWDY

 メトロに、JONNYがやってきた。TEENAGE FANCLUBのNormanと、元Gorky's Zygotic MynciのEurosによるデュオだ。今回の来日公演で回る幾つかの街で、それぞれ違った日本人のサポートアクトを迎えている。京都はトクマルシューゴだった。


 オープン前にメトロの扉をあけると、トクマルくんが物販ブースのベンチで横になっていた。このひとの放つ空気は、ある瞬間にはとても大人びていて、その次の瞬間にはとても子供っぽくなる。初めて会ったときからそうだった。会うたびにだんだん「大人」の顔が変わってゆくにせよ、子供の部分はずっと同じままのように思える。
 ちょっと考えてみると、これは案外どんな人にも当てはまるのかもしれない。子供を自分の中に残したまま、歳をとってゆく。まるで年輪のイメージだ。でも、トクマルくんはそれとも少し違う。「子供」を年輪の内側に閉じ込めるはでなくて、むしろ、多面体の一面に乗っけたままのような回転している、といったほうがイメージに近いだろうか。
 ライブでは、Gellersの” Guatemala”やThe Bugglesの[ラジオスターの悲劇(邦題が好きなので、そのまま使うことにしている)]、そして代表曲たちを中心に披露してくれた。おそらくJONNY目当てで来たであろう風体の30代以降のオーディエンスたちにも喝采を浴びる。いいライブだった。

 JONNYのライブの素晴らしさはあえて言わずもがな。なんといってもこの二人なのだ。素晴らしくないはずがない。アルバムはまだ買えていないのだが、TFCぽいエヴァ―グリーンな曲も、ゴーキーズを彷彿とさせるサイケ・トラッドも、愛らしいロックンロールも、みんなある。
アンコールが出て、ステージに上がった二人は、それぞれのバンドの曲をやると言ってくれた。まずTFCの "I Don't Want Control Of You"、そしてゴーキーズの"spanish dance troupe"では、なんとトクマルくんがギターで参加。この二曲でぼくは完全にまいってしまった。


 思い起こせば、TFCの『Songs From Northern Britain』もゴーキーズの『spanish dance troupe』も、大学生のころ、千本丸太町にあったユリナレコードで買ったのだった。授業をさぼり、飲みに行く約束をすっぽかし、食費を削り、お店で働いている友人がいるときにしか行かず、頼み込んで従業員割引の値段で買わせてもらったCDたち。あの頃のどうしようもない生活とか、思い出したくない失敗とかもぜんぶフラッシュバックさせながらの、でもそんなこととはまったく無縁な名曲が目の前で歌われる。ほんのすこしだけやるせなさを孕んだ、不思議な種類の感動がそこにあった。
 数年前の自分の暮らしに密接に結びついていた音楽が、いま新しい鮮度をもって再び流れるとき、その音楽とともにあった暮らしのことも思い出すのは、どうしてなのだろう。
 わたしのなかにいる「子供」を年輪に例えるなら、そこからおとなになる時間の一刻一刻もまた年輪のようにわたしに刻まれ続けている、ということなのだろうか。年輪を刻む一要素であった音楽が、その当時のわたしを連れて帰ってくる。もしそれが本当ならば、なんと幸福で、情けなくて恥ずかしくて、なつかしい出会いであることか。

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2011年05月19日

A record at Osaka

福島にあるスタジオ、ダンロジャースでレコーディング。昔からの友人たちではじめた「あくび」というバンドのデモを録る。

前日は遅くまでボロフェスタの会議、そのあと若者たちとちょっと話をして結局明け方近くになってしまったので、寝不足のままJRに飛び乗り、補助いすに腰掛けてギターケースに寄りかかってうつらうつらしているうちに大阪に到着。遅刻気味なのであわてて環状線のホームに走る。なんとか一時前にはスタジオに着いた。

スタジオオーナーの西野さん、エンジニア長井さん、ともにずいぶん昔から人づてにお名前を伺ってはいたけれど、実際にお会いするのは初めて。気さくで陽気なお二人だった。


真っ白なレコーディングルームは、天井が高く、音のひとつひとつ…たとえばシールドを引きずる音や、チューニングキーを回す音までがそのまま鳴っているようなクリアな音響。でもぼくはこの部屋では録れなかった。ここはドラムとギター、ベースの場所だったのだ(正確に言うと、ギターアンプとベースアンプはそれぞれ隣り合ったアンプブースに置かれ、その中で録音される。でも、顔を合わせて演奏する方が何かと良いからだろう、扉を隔てて、プレイヤーだけがレコーディングルームに入り、演奏するというわけ)。
MIDIで音づくりをしたキーボードは実音を鳴らすことなくミキサーに入力できるので、PAのミキシングルームの机で演奏。ぼくはそれら二つの部屋に繋がる、玄関のような小部屋で歌を入れた。

今回は、こんな手順で進めた。
まず全員で演奏をする。ただし、このときボーカルは仮歌。何テイクか録り、各人が気になった演奏個所を直し、その後に歌入れ。

みんな多忙すぎて顔を合わせるのが二月振り、プリプロらしいプリプロもしないまま臨んだわりには、わりと行き詰まることなく録れたように思う(デモのクオリティとしては、まあ及第点だろう)。それでも、二曲を録り終えた時点で時刻は六時半を過ぎてしまった。目標は三曲だったので、もう一曲録るか、二曲をミックスしてもらうか・・ちょっと迷ったが、二曲を仕上げてしまう方に決めた。ミックスはほぼ長井さんにお任せだ。

出来あがるまで、5人でスーパーに買出しに行ったり、併設された休憩室でテレビを見たりして待つ。CMに入れ替わり立ち替わり現れる芸能人を指してのとりとめない会話。この感覚はなんだか懐かしい。そういえばこんなふうに時間が流れてゆくのを、ぼくはここ最近忘れていたように思う。まあそんな中でもメールや電話は引っ切り無しだったし、ノートパソコンを広げて、梱包材のプチプチをひとつひとつ潰すように仕事をしたのはいつも通りだったのだけれど。

一曲目の仕上がりが午後九時半。二曲目が出来たのは午前零時。京都へ戻る最終のJRは零時二十五分大阪駅発。ひとりだけ大阪に住む岡村ちゃんを残すことになるけれど、あとの京都組四人でタクシーに飛び乗れば、まだ間に合うかもしれない。彼女に後を託してスタジオを飛び出る。が、車はおろか、人通りもまったくない。あとで思えば、タクシーなんてあらかじめ呼んでおけばよかったのだが!

すごすごとミキシングルームに戻る四人。長井さんが岩橋に「ビール買ってきて」とお金を渡してくださった。とたんに皆の元気が少し戻る。
スーパードライとコーラで乾杯したあと、マスターのデータをDVDに書きだしたり、持ってきたCD-Rでサンプル盤を焼いたり、仕上がった音源を何度も聴き返してああだこうだ言いあったり、長井さんからいろいろ面白いお話を聴かせていただいたり…三時前まではなんとか時間を潰したが、さすがに限界が来た。みんな翌日の仕事もあるので、やっぱり帰ろうという話になり、ぼくは生まれて初めてタクシーでの越境を経験することに。

大阪のMKタクシーは、初乗り運賃が五百円だった。高速に乗り、メーターが五千円を超えた瞬間、上昇額が五十円から二十円になったのを見た。運転手さんはサンタナが大好きでライブに四回ほど行ったことのあるひとだった。昨日は和歌山へお客さんを届け、今日は丹波からの帰り、名古屋まで載せてゆくこともざらにあるらしい。片道二時間半のタクシー移動なんて想像するだけでも運賃が怖いが、その倍の時間をかけて大阪へ戻ってくる運転手さんのことを考えるとなお感心する。

ともあれ、真夜中にひとり二千円余りで大阪から京都へ戻って来れたということに驚いた帰り道も含めて、いろんな経験をした一日だった。
でも、さすがに連日の寝不足がこたえはじめている今日…

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2011年05月18日

shoewasher

昨日、東京から戻って、スニーカーを洗った。

御幸町のお店で買ったピンク色の体育館シューズは、半年のあいだほとんど毎日履いていたせいで、もうすっかり黒ずんでしまっていた。裸足でつっかけたり、水たまりを平気で踏みつけて歩いたりもしていたので、中もひどい汚れかただったと思う。じつのところ、右足の爪先もめくれはじめているし、踵もすり減って穴があきかけているのだけど、愛着もあり、あたらしいのを買うお金も勿体ないので、もうちょっとだけ(できるなら、踵や爪先から足が飛び出るまで)履き潰してやろうと思いたった、というわけだ。

中学生の頃、夏休みに上履き洗って以来の靴の洗濯は、けれど、思った以上に大変だった。石鹸と歯ブラシでごしごしと擦っても、灰色にすすけた泡の割にズック地の汚れは取れてくれない。一通り洗い終えてはみたけれど、とくに見た眼に変化はなかった。すすぎの水はあんなに真っ黒だったのに!しかたないので、洗面器にお湯を張り、ボトルからハイターを振りいれてみた。ピンク色でさえなくなるかもしれない、まだらになってしまうかもしれない、と思いながらの漂白剤投入。
3時間ほど放置して、もう一度お湯ですすぐ。ほんの少しだけ、黒ずみはとれた。全体に薄汚れた感じは無くならないけれど、なんだか気が済んでしまった。この沁みついた汚れは、いつだって歩みと共にあったのだから、仕方がないのかもしれない。内側の汗や黴菌がすこしでも流されたということで、よしとしようと思った。

そのスニーカーだが、まだベランダにある。せっかく洗った矢先に降り出した雨のせいで、うまく乾かなかったのだ。今日は大阪でレコーディング。水色のスプリングコートにサンダルという格好はどのくらいちぐはぐに見えるのだろうかとすこしだけ気にしながら、電車に揺られていた。天気は一転して、窓の外は快晴。さて、いい音源ができるといいな。

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2011年05月16日

音の採集日

ひさしぶりに強行軍で東京へ。レコーディングに行ってきた。
録りかけのまま長いあいだ半ば放置されていた、アルバムになるはずの音源の続き。

夜行バスが新宿駅前に着き、いったん田代家へ向かう。西武線は車内の電灯を消していた。このくらいのほうが、かえって朝の陽射しがまぶしくていいと思った。
都立家政。田代夫妻はこたつ(正確にはこたつの抜け殻)で眠っていた。このふたりのこういう姿を見ると、とても安心する。
ぼくがやってきたので、夫妻は階上の寝室へ。作りかけの曲(今回の音源には収録されないが)にしばらく取り組んだ後で仮眠をとり(フローリングにごろ寝するのが気持ちいい日曜の午前だった)、12時過ぎに出発、目黒へ向かう。

東京はもう初夏の陽気だ。半袖のひともちらほら見受けられる。駅の照明が少なかったり、券売機が何台か停止していたり、といった光景にも慣れた。目黒駅からバスに乗り、4つ目の停留所で降りる。住宅街の真ん中にある健太郎さんのスタジオ、というより「住宅をそのまま使った」スタジオは玄関先に打ち水がしてあって、植え込みの前ではいつもどおり隣家の猫がくしゅっと、うずくまっている。なぜか嬉しくなった。じっとぼくをみる。触ろうとすると逃げる出す準備をするけれど、ぎりぎりまでその場所を動かない。こういうふてぶてしい奴が、嫌いじゃない。
ツイッター上で追いかけているせいだろうか、健太郎さんとはあまり久しぶりという気がしなかった。初対面の田代君との挨拶もそこそこにして、録音に入る。ベースを4曲入れ、歌のダビングを二曲分やって、終わり。ベースが入ると、歌の印象も変わって、なんだか曲そのものが地に足のついた感じになった。ミックスはいったん健太郎さんにお任せすることに。

スタジオにあったプレシジョン・ベースに、田代君がとても惹かれてしまい、録音後はしばらく試奏の時間。もともと持っているジャズ・ベースもいい音なのだけれど、音のパンチ力はやっぱりプレべかなあ。ぼくも久しぶりに弾かせてもらった(大学2回生のとき、教室で失くしたっきり。あれもプレベだったと思う。安物だったけれど)。アナーキー・イン・ザ・UKのイントロのベースラインをうろ覚えでなぞると、二人は笑っていた。

家に帰ると、おすしさんは埋火のレコーディングの準備に四苦八苦していた。もうベーシックトラックは録り終わっているそうだが、アレンジがなかなか決まらないまま期日が迫っていて、なんとしても明後日までには具体的なアイディアを揃えておかなくてはならないのだとか。今日は一日かけて水の音と足音を録っていた、と苦笑する。近所の居酒屋でコロナビールを飲みながら話を聞く。大変そう、でもとても恵まれた環境での制作。負けず嫌いの彼女のことだから、きっといいアルバムを作るだろう。

そうそう、田代君は結局、あのベースを取り置きしてもらっていた。いちおう奥さんに買っていいか確認するつもりだったらしい。返事は即「いまが買い時だよ!楽器はふたつ持っておかないとだめだよ」。おすしさんは今回のレコ―ディング中にストラトの必要性を痛感したそうだ(彼女はSGを使っているのだが、イメージしたアレンジにはこのギターの音がどうしても合わなかったのだ)。そっけないほどのやりとりが、とてもミュージシャン夫婦らしくて、可笑しかった。

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2011年05月14日

うさぎの涙

ミッフィーの生誕55周年を記念した展覧会へ行ってきた。

ぼくは、このうさぎの女の子が好きで、一時期は手帳も赤のうさこちゃんだったくらいだ(笑う友人が幾人もいたが、一年のあいだ意地と愛着で使い続けた)。ひょんなことから招待券をもらい、改装されたばかりの大丸梅田店の十五階にあるちいさなミュージアムに、ひとりで足を向けたのだった。
親子連れとバッティングしないよう平日の昼下がりを選んたのだけれど、予想を超えて客層は多彩だった。女性グループ、男女二人組、家族連れ、ブルーナさんによく似たおじいさんがひとり、ゆっくりと展示を見て回っていたりもした。

原画やデッサン、絵本に採用されなかったカットが制作時期に沿ってずらっと並んでいた。途中のモニターでは、ブルーナさんにインタビューした映像が流れていた。さらっとした語り口の中にいろいろ感銘を受ける事柄があったけれど、なかでも印象に残ったのは、先人たちに影響を受けまた次の世代に影響を及ぼしてゆく、そのサイクルの中に自分が居ると知ったときに感じる喜びについて、彼が話している短いシーンだった。
この八十歳を過ぎた現役画家は、黒のポスターカラーで丁寧に丁寧に線を描き続け、描き続けて今に至る。さらに今もなお、「これまでよりほんのちょっと、よく」ということを考え続けているのだそうだ。そしてその信条と、それを語る彼の眼差しのすばらしさを幾重にも飛び越えて、圧倒的な事実がある。それは、あのうさぎの絵本が、こんなにもたくさんのこどもに、おとなに、愛されているということだ。

泣くところなんて一つもなかったのだが。

展示の最後には、東日本大震災の知らせを受けて、ブルーナさんが描き下ろしたといううさこちゃんの絵が、そのニュースを掲載した新聞記事とともに掛けられていた。両目から大粒の涙をこぼすミッフィー。両目から涙を流したのは、大好きなおばあちゃんが亡くなったとき以来らしい。
ニッポンのために泣いてくれたミッフィー。それから2カ月、大地を汚し海を傷つけるニッポンのことはどう言うのだろうか。いや、それでも彼女は泣いてくれるだろう―ただしそれはニッポンのおとなではなく、きっとこどもたちのためだけだ。あるいは、もう彼女を泣かせてはいけないと言うべきだろうか。
なにはともあれ、うさこちゃんのことばかりを考えながら、帰りのラッシュアワーが始まった阪急電車にすし詰めになって揺られるぼくは、取り澄ました外見からは想像もつかない滑稽さだったと思う。

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2011年05月13日

タワレコ×ゆーきゃん

5月10日より、タワーレコード京都店にて
タワレコとゆーきゃんのコラボレーション企画が始まっています。

場所は、エレベーターから入って左手の、ウォーターフォール型什器のところ。
ゆーきゃん/あらかじめ決められた恋人たちへ/シグナレスを中心に、
手描きの人物相関図を描きました。
仲良くさせていただいている方々の作品に紹介コメントもつけて展開中です。

企画の対象作品(シールが貼ってあります)には、おまけCD-Rが付きます。
収録曲のほとんどが全国流通に乗っていない楽曲。
サンレインレコーズでも取り扱っていない音源もあるのです。なかなかレアだと思います。
枚数限定、期間は6月9日までの一か月です。

5月22日(日)には、この企画に関連してインストアライブも行います。
出演は、長谷川健一、OUTATBERO、ゆーきゃん with 赤井裕&岩橋真平(スーパーノア)の3組。
15時開始、入場無料です。

レコードショップは、お店である前に一個のメディアでもあったりして、
本題とは別筋の、雑学のコラムのような感じで見てもらえると嬉しいのですが。
それにしても、こんな無謀な企みを許してくださったタワレコさんに感謝。
みなさんもどうぞ覗いてみてください。
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2011年05月09日

記録

4月21日(木)渋谷WWW / 4月24日(日)京都METRO / 5月6日(金)梅田Shangri-la
シグナレス

1 さよならアメリカ、さよならニッポン
2 Y.S.S.O.
3 パレード
4 LOST
5 風
6 太陽の雨
7 朝顔
8 ローカルサーファー

enc 星の唄

3公演とも、同じセットで。
渋谷はVJにハラサチコ、京都はVJ TR3、大阪は照明にディーノを迎えてのステージ。


このユニット、ずいぶん長いことかけて作ってきたように思っていたけれど、
まだスタートラインに立とうとしているにすぎないことに気付く。
でも、すでになんとたくさんの恩を背負っていることか。返さなくてはならないなあ。


とりあえずはアナ、やけのはら、ドリアン、DE DE MOUSE、Predawn、YOLZ IN THE SKY、埋火、tobaccojuice、佐野さん、森田君、宋さん、瀧井さん、よっつさん、岡野さん、クロセさん、WWWとメトロとシャングリラ、吉田さん、平川さん、spinbox、そして来てくださったみなさん、ほんとにどうもありがとう。精算のまだ終わっていない方、急ぎます。お待たせしてすみません。


さて、池永さんはもう、あら恋のアルバムリリースを控えている(明日が入荷日)。
こっちもたくさん売れるといいな!
そしてぼくはこの間に、いいメロディといい詩をたくさん書きためておきたいところ。がんばろう。


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2011年05月04日

記録

5月2日(月)木屋町Urbanguild
「カンサイ・レーベル・アーカイヴス」司会。

FMN sound factoryの石橋さんと、元Jesus Feverのnonさんを迎えて。
ホームページを見ながら、あれこれとカタログを聴いてゆく。
もうちょっと段取りをちゃんとして、メリハリをつけて聴いていけばよかったと反省。
やっぱり3時間では46タイトルの作品全部をおさらいするまでに至らない。

それでも、山本精一さんの自称フュージョンバンド「LIVE UNDER THE SKY」や、
もうとっくに解散してしまった名古屋の「CARAVAN」というバンドのライブ盤など、
はじめて聴く、そして強烈に惹きこまれる音源がたくさんあった。

のんちゃんのライブも、素晴らしかった。
彼女がリッケンバッカ―を抱えている姿を見ると、それだけで嬉しくなる。
最後に、キツネの嫁入りのひーちゃんをピアノに迎えて歌われた
ロバートワイアットの"Shipbuilding"、あの場に立ち会えたひとは本当に幸福だったと思う。


お客さんは少なかったけれど、
Urbanguildのバー・スタッフ、辻さんが「めちゃくちゃ面白かった!」と言ってくださって、
自己満足なだけじゃなかったと、胸をなでおろす。
もうちょっと企画を練って、宣伝をしっかりして、第二弾をやりたいなあ。
石橋さん、のんちゃん、そしてひーちゃん、ありがとうございました。


それにしても、カセットレーベル時代のFMNリリースを、
石橋さんもあったことがないという人がサイトにまとめてくれていたのには驚いた。
なにかを分類したり、体系づけたりしたいという知的欲求は、
案外あちこちにその足跡をとどめているものだ。
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2011年05月02日

記録

5月1日(日) なんばベアーズ
JOJO広重×ゆーきゃん

1.空に沈む(ゆーきゃん)
2.ささやかないで(JOJO広重)
3.Can't Help Falling in Love(Elvis Presley)
4.天使のオード(ゆーきゃん)
5.いい娘だね(JACKS)
6.sang(ゆーきゃん)


JOJO広重さんがやっていらっしゃる占いのお店"future days"主催のイベント。
「合コン」と名うっていたけれど、ライブはこんなのだし、
嶽本野ばらさんと広重さんのトークショーはあるし、ゲームはじゃんけん大会だし、
占ブースはあるしで、当然の合コンにはならず。


ライブは、広重さんとあれこれ言いながら、曲順は決めずに話の流れで歌っていった。
ぼくはステージ上でわりとおしゃべりなくせに、いつも次のライブの告知を忘れる。
怒ってるときは怒っていて、悲しんでいるときは悲しくて、
そして楽しい時は楽しくて。だめだなあ。

広重さん、嶽本さん、初めてなのにちゃんとすわって聴いてくださったお客さん、
ありがとうございました。
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