「ボロフェスタ」
シグナレス
1.Y.S.S.O.
2.パレード(new version)
3.太陽の雨
4.朝顔
5.ローカルサーファー
■2011年10月23日(日)京都 KBSホール 地下ステージ
「ボロフェスタ」
ゆーきゃん
1.天使のオード
2.エンディングテーマ
3.明けない夜
4.マリー
5.太陽(仮)
出演時以外はほとんど建物の外に居て、いろんなちょっとした出来事の対応に追われていました。肉体的な疲労もあり、進行が気がかりすぎることもあり、最後のステージ前にはもう歌えないんじゃないかとすら思ったのですが、声が枯れてしまう前に出番が来てよかったです。
十年目にして初めて、加藤さんが居らず、飯田くんが代表になったボロフェスタでした。KBSホールに移ってからは間違いなく最大級、西部講堂時代から眺めてみても一・二を争う規模での開催でしたので、準備の段取りや資料の取りまとめなど、考えなくてはならないことも例年の数割増しで湧いてきたように思えます。毎年毎年ボロボロなるのが当たり前のボロフェス、とはいえ、今年の擦り切れ方はさすがに最後まで乗り切れるか不安になるほどのものでした(これは飯田・土龍両氏ともに相当なものだったようです。彼らのブログにも同じようなことが書かれていましたね)。
もちろん現場での準備作業も山のようにあり、当日の運営もめちゃくちゃに大変だったのですが、スタッフみんなの力で無事イベントを終えることができました。みんな、ほんとにありがとう。とくに各部署のリーダーの奮闘には心から敬意を表したいと思います。また駆けつけてくれたOBたちの手なれた動きも助けになりました。
入学したての大学生から休日返上のサラリーマンまで、それぞれの部署でそれぞれの仕事をするスタッフたち。思い思いに出入りを繰り返し、飲んだり食べたり座りこんだりのお客さんたち。楽屋で、食堂で、出演後のフロアでのびのびと振る舞う出演者たち。会場に居るいろんなひとの顔を見ながら(もちろんゆっくり眺めている暇なんてなかったのですが)、ぼくは、あの、06年の最終日、大混乱のボロフェスタのなかで味わった感覚をもう一度思い出すことができました。
それは、今年のボロフェスタが、もうぼくの(そしてたぶん飯田くんや土龍くんの)ボロフェスタじゃない、という、あの奇妙な実感です。
もちろん、今年は舞台チームの頑張りもあり、タイムテーブルが滅茶苦茶になってしまうこともありませんでしたし、あの年に比べるとどこで何が起きているのかを知ることは容易だったのですが、とにかくも「ボロフェスタ」というイベントが、主催者の手を離れてどこかに浮きあがっていった―たとえば、ダイブした人が皆の手に運ばれてフロアを流れてゆく、あの景色にも近い―ように思えたのは、誰が何と言おうと(たとえぼくがあまりに疲れていて、ちゃんとした判断力を失くしてしまっていたからだったとしても)これがだだの「巨大な音楽イベント」ではなく、一個の「祝祭」になったからに違いありません。
去年の三月ごろ、古株のスタッフである呉羽くんとぼくがnanoの二階のバーで飲みながら話したのは、まず「有無を言わさず音楽こそがいちばん偉い」場所をつくろう、ということでした。お金を払う側ともらう側、お客さんとスタッフ、出演者と主催者、それら区別を越えて、すべての上、会場の空気全部の中で圧倒的に音楽が鳴っているような場所。それが、ぼくらがボロフェスタを続けてきた一つの理由であり、答えであるに違いない、と。
この目標は、去年のボロフェスタでは(イベント自体はそれなりに成功したとはいえ)、まだやはり遠かったように思えます。今年、それが叶ったかどうかはまだ分かりませんが、すくなくともある瞬間、ある時間においてはぼくはそれを見た気がしました。その原動力のひとつが「十周年」という旗印だっとして、つまりボロフェスタは、十周年にしてやっとぼくにその答えを、ぽつり、語り始めてくれたということになります。
ZAZEN BOYSの最後のアンコール、メンバーさんのご厚意でステージに上げていただいたとき、フロアに溢れるあなたたちの笑顔をみて、ぼくは無性にうれしい気持ちになったのです。それは主催者としての「たくさん来てくれてありがとう!」という感謝とも、「無事にゴールへ辿りつけた!」という安堵ともちょっと違い、言うならば「誇り」にいちばん近いものでした。ぼくらが植えたボロフェスタの苗が、まるで大きな木になって、皆がその下に集まり、遊んで、笑っている。誇りに思うのは自分たちでもなく、イベントでもなく、そこに流れる空気と、音楽と、笑顔そのものに対してです。この気持ちを伝えるのには、おそらく「ありがとう」以外の(以上の?)ことばを以てしなくてはならないのでしょうが、あいにく語彙が貧弱で、うまい言い回しが思い浮かびません。だから、みなさん、来年また会いましょうね。
これは余談です―あの最後の「東京節」で、ぼくはここ数年来出したことのないくらい大きな声で歌いましたが、それは気分が高揚していたからというよりも、どちらかというとZAZEN BOYSがステージ上で奏でる音量の大きさにつられたのです。だって、めちゃめちゃ音でっかかったから…あそこで「ゆーきゃん、やっぱり声、聴こえないよ!」ってなったら、出オチもいいとこじゃないですか。