いまはずいぶん減ったが、駆け出しのころ(?いまだにちゃんと駆けられてないけれど)には「おまえは、どうなりたいねん」みたいな話をよくされた。
有名になりたいのかそうじゃないのか、モテたいのかそうじゃないのか、音楽で食いたいのかそうじゃないのか、とか、そういうことを全部ひっくるめての苦言というか小言というか、とにかくヒトコト言ってやらんと!という気持ちが相手にそんな物言いをさせたのだろう。とくに2000年代の初頭、先輩のたちのバンドは次々とCDのリリースを決め、メジャーデビューまで果たすひとたちもたくさんいた。野心もあり、実力もあり、レーベルや事務所のスタッフの力添えもあって世に打って出る準備を着々と整えつつあった彼らにしてみれば、ぼくのやっていることからはもどかしさしか感じられなかったのかもしれない。それにしたって、とにかくこの質問を受けるといつも閉口したものだ。「どうなりたいか」簡単に語ってしまうと、それで満足してしまうのではないかという情けない不安がちいさな理由、質問が漠然としすぎていて、これは答えを求められているのではないと思っていたのが中くらいの理由、そして一番大きな理由は、結局自分でもわかっていなかったから、だと思う。
こんな曲を書きたい、こんな詩を書きたい、アレンジはこうして、こんなアルバムを作って、こんなイベントをやって、今年のボロフェスタはこんなふうで―ぼくの考えはずっとここで止まっていた。「やりたいこと」には、自分自身についてのビジョンや計画が入っていなかったのだ(もちろん全く、というわけではないだろうが)。地図や設計図を描く才能をほとんど持ち合わせていなかったのろう。あるいは無策が美徳だと思っていたのかもしれない。
そんなぼくが昨日メトロで、音楽プロデューサー/エージェントの永田純さんとお話ししていて気付いたのは、何事にも「こうなりたい」はあるけれど、それは思っていたような「手順」ではなくて、たとえば出掛ける前に忘れ物がないか?というような、チェックリストで見えてくるものだった、ということだ。
永田さんの本は『次世代ミュージシャンのためのセルフマネージメント・バイブル』という。なんだかあけすけなタイトルだが、実際ページを開いてゆくと、参考になることがたくさん書かれている。それは音楽を続けてゆくため、自分の音楽を他者にとっても価値あるものにしてゆくために、できるだけ負担やストレスを減らしてゆくことを目指したいくつものノウハウだ。そしてそのノウハウは、頭のなかを整理するだけで案外簡単に見えてくる。昨日のお話のなかで、改めて教えていただいた。
さっき、無策が美徳だと思っていた、と書いた。もちろんいまはそんなこと思ってもいない。本当にそうだったかもわからない。無策だった自分を昔に戻って説教したいくらい。
でも、やはりときどきは思う。できるだけノーガードで、すっと歩いてゆくこと(もちろん歩けないことも)は、怖いけれど、けっこう楽しいのだ。感性と、直観と、あとは真心と、そうだ、歌。そのくらいしか誇るものがなくて、それでも聴いてくれるひとがいて、たすけてくれるひとがいて、そして歌わせてくれる場所がある、というのは、もう奇跡としか言いようのないくらいのありがたいことだ。
ただ、だからこそ、あれこれ無用なものを抱え込んで、できないことまでやろうとして、いらないものを望んで、それで倒れそうになるのは、本末転倒だというのことも、最近はとみに感じている。永田さんが示してくださったのは、どんなレヴェルの、どんな目標を持つアーティストにも(もっと言えば、たとえば蕎麦屋をやりたいひとにも!)参考になる「自分でできること、ひとに任せること、そして(これはぼくの勝手な解釈だが)あきらめること」のリストの作り方だった。無策なら無策なりに、ノーガードで歩くならノーガードなりに、歩きやすい装備でゆくほうがいいなあと、あらためて(というか、やっと)思った次第。
まあ、こんな風に書いたからといって、表だって変わることはそんなにないけれど―とりあえず名詞は作ったほうがいいかな、とか、まずはそのくらいから始めてみるつもり。それにしても、いままでずっとDIYの塊みたいなフェスに関わってきて、自分のことにはなんにも頓着しなかったなあと、いまさらながら我ながら、呆れている。はたして、どうなりたかったんやろか。
それとこれと関係あるようなないような、フェイスブックのページを作ってみました。ブログは書くのに覚悟が要り、ホームページは更新するのにも時間がかかるので、こまかな情報はこちらでチェックしてください。ちなみに2012年に限ってもこの先まだまだ、アルバムのリリースとかワンマンとか、お知らせすることがたくさんあります。多難でも、前途があるのは素晴らしいことだと、最近よく考えるのでした。
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posted by youcan at 01:33|
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