「さらば、ゆーきゃん」
12月27日 (金)木屋町UrBANGUILD(http://www.urbanguild.net)
[出演]
▼ゆーきゃん「あかるい部屋」バンドセット
田代貴之/田辺玄/森ゆに/妹尾立樹
▼ゆーきゃん&フェザー・リポート
日下部"だいちゃん"裕一/岩橋真平/岡村寛子
▼ゆーきゃん with his best friends
ラリー藤本/伊藤拓史/柴田康平/赤井裕/植木 晴彦
▼Ur食堂バンド(オリジナルあくび)
石渡新平/ひさよ
▼ライブペインティング:足田メロウ
うた:ゆーきゃん
OPENING GUEST:井原羽八夏
写真撮影:勝俣信乃
PA:粕谷茂一
企画制作:マドナシ(キツネの嫁入り)
OPEN 18:00 / START 19:00
adv.2000 yen + 1drink / door.2500 yen + 1drink
チケット予約 / 詳細
UrBANGUILD
MAIL:urbanguild@w7.dion.ne.jp
TEL:075 212 1125
いろんな人から、どうせまたすぐもどってくるんでしょ、と云われるんですが、今回ばっかりは「まあね、待っててよ」と軽口めいた答えを返すのがためらわれます。生まれてこのかた、それまで思いもよらなかった道ばかり歩いてきたので、この先どうなるか全然わかんねえや、というような状況にはすっかり慣れっこなんですが、京都はぼくを自由に泳がせてくれ、育ててくれた水槽でした。いや、アイデンティティのひとつにさえなっていた感があります。ステージの始まりに「きょうとし、かみぎょうく、かみしちけんからきました、ゆーきゃんといいます」と挨拶してからギターを弾き始めると、すーっと気持ちが歌のほうに向いていったのをいまでも覚えています。そんな馴染の街を離れるにあたって寂しくないはずもなく、「とはいえ、名残惜しいよね」とあちこちで愚痴めいた話をしていたら、見かねた旧友・マドナシが「ほんなら俺が送別会をやってやる」と、こんな素敵な、というよりも無謀なイベントを企画してくれました。ひとが来るのかどうか、全然自信がないのですが、とりあえずこれだけ縁あるプレイヤーを呼んでおけば、すくなくともぼくはこころぼそくない、むしろめっぽう楽しいのは間違いありません。
知り合いの間では昔から、ゆーきゃんは何をやってるのかよく分からん、というのが定評でした。オーガナイザーなのか、レコ屋なのか、ミュージシャンなのか…音楽をやるにせよいったい幾つバンドやるんだよ、と。いい加減になにか一つに絞んないと大成しないよ、というアドバイスも度々いただいたことがあります。道理としては返す言葉もない、我ながら迷走だなあと思ったこともしばしば、それでも自分のこころ―というほどのものでもなくて、もっと胃袋の奥のほうにある何か―では、誰の云うことも聞くものかという底意地がずっと消えずに残り続けて、そればかりか、遠回りということはそれだけたくさんの道を歩けるんだなどと変な理屈を思いついたりして、いままでてくてくと寄り道しながら歩き続けてきたのでした。
その、たどってきた道を振り返ってみるにつけ、経済的な成功も、名声も、業界的な評価も、もしかしたら客観的には音楽的な熟練や深みさえも、結局なんにも手にできてはいないんですが、不思議なことに口惜しいと思わないのです。いまここに15年前の自分があらわれて、オマエはなんのために頑張ってきたんだと肩を掴まれても、はっきりとした答えはなにひとつありません。いや、オレとは別の生き方もいいと思うよ、なんてことすら云いかねない、そのくせ、ゆーきゃんを続けてきてよかったかと聞かれれば、まちがいなくよかったと答えるんだと思います。ややこしいのか、単純なのか、こんなもんでしょうか。
今回集まってくれるみんなとは、演奏を介して、ツアーで、酒の席で、とにかくいろんな場面を過ごしてきました。一番古くてもうGとメロウくんとモイチさんは13年の付き合い、一番あたらしいのは植木くんですが、去年の大晦日にふたりでB’zのALONEを熱演する(しかも僕はユキサダ店長にビリビリに破かれたノースリーブとホットパンツ)という非常にシュールな時間を共にしたりもして、みんな高いミュージシャンシップと馬鹿馬鹿しい遊び心を併せ持った、信頼できる音楽人ばかり。死にいたる病(たぶん今で云うところの中二病)のリハビリのつもりで歌い始めたときから、ひたすら(上手く表現できない自分と受け止めてくれない世界に)苛立った時期も、妙に(勘違いの)野心家だった時期も、(はじめからできやしない)打算や立ち回りで自縄自縛だった時期も、(調子に乗って東京なんて出るものだから)すっかり自分を見失ってしまった時期も、裏方とSSWの両立に悩んだ(この頃がいちばん呑んだなあ)時期も、借金に苦しんでも恋人に出ていかれても、結局「すべてを指して、ゆーきゃんと云うのだと」思わせてくれたのは音楽、彼らと一緒に奏でて生み出した音楽そのものだったのです。
ここまで書いて、ふと読み返しましたが、なんだか引退する人が心残りに書いた最後のメッセージのようになってしまいました。いや、そんな大げさなものではなくて、これは単なる送別会とでもいいましょうか。お互い会える機会は減るけれど、元気でいこう、絶望するなよ!ということを云い合えればいいなあと、思っているだけです。富山に帰って、春からの暮らしがどんなものになるか、例によってまだ全然予想だにつかないんですが、きっと音楽はやめませんから。いや、たぶん向こうがぼくを離してくれない。逃げても逃げても、そこには音楽があるでしょう。西遊記のお釈迦様みたいなものです。
(余談ですが、正直に告白しておくと、3月にnanoの10周年があって、それにも誘われているのです。大切な場所の節目のお祝いなので、できるだけ駆けつけたいと思っています―おい全然さらばじゃないやんけ、と云われようと!)
というわけで12月27日、忘年会を休みたいかた、仕事納めが早く終わったかた、そのほかお時間のあるかた、よかったらアバンギルドにお越しください。会場外で私物CD/レコード/本etc..の放出なんかもやってしまおうと思っていますので、別にライブは観なくてもいいや、というかたもぜひ。あ、でも長野から来てくれる井原さんの歌は聴いたほうがいい。いろいろ悩んでいたぼくに、やっぱり真摯に歌おうと思い出させてくれたひとです。