そのどこかに位置する地下鉄のホームから
陽の光を求め
分かち合う相手を求め
単純明快な安らぎを求め
南改札のエレベータで列を待つひとよ
きみの旅路はいつまでも終わることがない
(はっきりさせておきたいのは それがあれらの安っぽい歌詞に出てくるロマンチックな小旅行なんかではなく もっと悲惨でもっと重厚でもっとも難解なあの現実に関する流浪であるということ)
いくつかの層に分かれた世界の
その向こうに隠れた別の可能性について
高らかに歌ってもよい
狂おしく打ちつけてもよい
手がしびれるまで舌がもつれるまで言葉に尽くしてもよい
それでもきみのいまは変わることがない
いまのきみは何にも換えがたい
それがどんなに哀しく
愚かしく
逃れることのできない栄光なのか
南改札の向こう さらに地上に続く階段の向こう
燦然と輝くのは雪に埋もれた丘
十字架も卒塔婆も鳥居もない
ただ葉を落とした あの詩人に「僕の骨」と呼ばれたかもしれない楡の木だけが叫ぶように立つ
まばゆい夜の丘
きみはその前で ゆっくりと息をつき
ポリエステルの傘をさし 今日の家路につくだろう
さて ここがどこだかあててごらん