2008年12月14日

無題

十二月の空気の粒が
錐状の光を まっすぐに飛ばす
眠たげな瞼を射抜かれて
はじめて甘い夢がとっくに終わっていたと知る
大変だ 駆け出すその速度ではもう次の快速にも間に合わない
迷ってしまったみたい
迷っていたことに気づいてしまったみたい
ねえ きみは
あの初夏の芳しいシンフォニーをいつまでも纏っていられると
本気で思っていたんだろう
きりぎりすのように
うさぎのように
祈りのように 願いのように
ただ健やかに涼やかに生きてゆけると
信じていたんだろう
冬はいつだって巧妙な罠で 僕らを不意に襲うのに
陽だまりを奪い合い 炎を盗み合い
街中をぴかぴか光る浪漫で飾り立てては必死でかき集めたぬくもりの山
その先にあったのは腐敗と火災 誰かの肩に掛けられるほどの布きれ一枚ない
そんなふうになるまで きみは一体なにをしていたんだい
この季節が美しいのは
ひとを凍え殺す程に残酷さが輝くから
骨のような枯枝の向こうに月が燦然と嘯くから
老いた獣の泥だらけの歳月の上に
線路傍らの廃家電から染み出したオイルの表面に
満員の酒臭い終電車がぶちぶちと潰しながら進む年の瀬の断片に
青白く反復するメロディが 繰り返し繰り返し降り注ぐから
そのなかでたとえばひとつ繋ぐ手
36度すこしの温度があればそれで充分だって
もっと早く気付けばよかったのにね
ほら でも
恐れてはいけない もう一度
この中途半端な寒さの底から始めよう
東京にはあのいやなみぞれ雪はあまり降らないんだってさ



posted by youcan at 00:04| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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