2011年06月15日

スナップ

 午前十時を少し回ったばかりの新宿駅東口に、幾組かの親子連れが歩いていた。ベビーカーを押したり、娘のて引いて信号が変わるのを待ったり、しゃがみこんで息子と話したり、どの親子も若かった。急ぎがちの靴音が街を埋め尽くすあさのラッシュアワーも終わり、もういちどビルが会社員や従業員たちを一斉に吐き出す正午までにはまだ間があり、通りには弱い風が吹いていた。たぶん心地よい部類に入る、でも六月らしい湿気も含んだその風を受けて、横断歩道のいちばん手前には、軽やかな髪をふわふわと揺らす男の子がひとり。隣に並んだ母親の回りをくるくると回り、信号機が青になるまでの時間を数え、白い部分を飛び越しながら向こうへ行ってしまった。そのあとを、風は追うようにして進路を変え、見とれていたせいで、ぼくは青信号を渡りそびれてしまう。その瞬間に、ほんとうに大事なものは、目に見えないんだよと言ったあのひとのことばがあらゆる色合いを帯びて頭上に落ちてきた。いや、でも今日はきっとすこし違う。正しくは「うつくしいものも、恐ろしいものも、大事なものも、憎むべきものも、ほんとうのことは、いつだって目に見えない。けれど、それらはかならず目に見えるものと隣合い、あるいは目に見えるものの中に隠され、ときには目に見えるものから放たれることもある」そう言わなくてはならないだろう。こどもたちだけでなく、ぼくらには覚えるべきことが日々増えてゆく。もの凄い速さで。人類よ、日本人よ、わたしよ、どうか学べ。
posted by youcan at 14:18| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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