2011年10月13日

2011年10月12日

 きょうは『ロータリー・ソングズ』の発売日でした。

 今作のリリースにあたっては「七年ぶりのソロアルバム」といううたい文句をレーベルも流通も各媒体も使っていますが、その「七」という数字をタワーレコードで目にして、われながら驚きました。
 
 なにしろ、そんなにも長い間、うたい続けるとは思いもよらなかったのです。ファースト『ひかり』を出すまでにもずいぶんと時間がかかりましたから、足かけ十五年?ほどは「うた」と格闘し続けてきたんじゃないかと思います。いや、初めて詩を書いて、曲にして、録音までしてみたのが十四歳のときですから、そこから数えると、もっとか。

 そのあいだに、「うた」をロストしたことは、何度でもあります。あたまのなかで音楽が鳴らなくなったことも、あらゆる音符に無関心になってしまったことも、重力が地上のすべてのものを縛り付けるように、思うように自分の声が出せなくなったことも、あります(ちっとも自慢することではありませんが)。

 きっと、ぼくは「シンガー」ではありません―シンガーソングライター、という肩書を使っているくせに。生まれついて歌に選ばれて、祝福されてきたわけでは決してないのです(そればかりか、誤解を恐れずに書くと、ある時期、たしかに歌は呪いそのものでさえあったかもしれません)。にもかかわらず、「うた」がぼくのライフワークであり続けてきたことは、ひとつにはそれ自体の大きな魔力と引力でもあり、もうひとつにはぼくが「うた」に押し潰されたり跳ね飛ばされたりしないように支えてくれたた、たくさんの仲間たち―お客さんも含めて―のおかげだと思っています(名前を挙げ出すとキリがないので、ここでは割愛させてください)。

 このアルバムは、あちこちですでにお話ししていますが、大田区下丸子にあった高橋健太郎さんのご実家が取り壊される、その一週間ほど前に、録音されました。きっかけはこのブログと、健太郎さんのmixi日記だったと思います(まだmixiが全盛だったころに始まった録音ということにも、なんだか時の流れを感じる…)。

 あくまでひとつの記録、記念、記憶として録りはじめ、ぼくが京都に戻ったあとにはほとんどお蔵入りにすらなっていたものが、あの真冬のWHOOPEESで、FRAGMENTのおふたりに会ったことをきっかけにして掘り起こされ、エマーソンさんや田代君、見汐さん、そしてメロウ君の力を借りて、とうとう世に出ることになりました。それはとても幸運なことでしたが、ぼくにとってというよりも、歌にとってというべきでしょう。発し手さえもが、誰にも聴かれなくてもよいと思っていた声―それが、質素ながらも素晴らしい衣装を着せられて、窓の向こうに飛んで行けるのです。感謝のことばは、なにより皆に直接、個別に伝えなくてはなりませんが、まずはこの場を借りてお礼を言わせていただきます。ありがとうございました。

 この作品が、どんなひとに、どれだけの人に聴かれ、愛され、また見過ごされ、飽きられてしまうのか―それを思うと、楽しみでもあり、恐ろしくもあります。さっき母から電話がかかってきて、彼女は「あいかわらず歌詞がよくわからんねえ」とひとこと。国語の先生だった女性に歌詞のダメだしをもらうのですから、先が知れてるような気もしますが。

 ただ、ここを読んでくださっている奇特な方が、もしどこかで『ロータリー・ソングズ』を手にするようなことがあり、なおかつまた七年先に、さらには何十年もずっと先に、もう一度ふと思い出して、あ、また聴いてよう、などと思っていただける瞬間があれば、そのときこそ、きっとこの作品の意味が成就するような、そんなイメージは抱いています。
 それはある意味とても贅沢な願いごとですが、どのみち「音」は、そのままにしておけば空気に消えてしまうだけで、それを第一義的にパッケージするのは「作品」。そして最終的にそれが貯蔵されるのは「記憶」。だから、音を練り、詩を磨いて、やっと出来あがったこのミニアルバムが、ほんの少しでも聴いてくれる人のこころの記録紙に音符とことばを残してくれることを願っても、そんなに贅沢ではありませんよね。



 ちなみにこれは、ほぼ十年ぶりに顔をまともに出したPVです(昔、和車が録ってくれた「post coda」以来。そのときは鴨川沿いだった)。撮影は代々木公園、監督はParanelくん、出演は午後の公園を楽しむ皆さん、FRAGMENTのクッシーさんも友情出演してくれました。とても気持ちのいい日だったと覚えています。

posted by youcan at 00:19| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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