2014年02月03日

I'm wide awake though it's still midnight

 1月31日金曜日。中央通り商店街のお店に足を踏み入れたのは、いったい何年ぶりだっただろうか。

 総曲輪通りの奥。いわゆるシャッター商店街にカテゴライズされるであろう、静かなアーケードの途中にこの日の会場、でいだら屋はあった。左京区や高円寺の素敵な隠れ家たちにも似て(それらよりは少し洗練されている)カウンターカルチャーを自然に呼吸するひとたちが誰でも受け入れてくれる場所を作った、という赴き。入った瞬間<知らないうちにこんなところがこんなところにできていた!>と懐かしいような、悔しいような、嬉しさを覚えた。

 「めざめ」というイベントのタイトルは、シンプルだけどとてもいいと思う。
 DJブースとライブステージが向かい合わせで、出演者がみんなリレーをするように出番をこなしていった。最初のアクトだった舟本さんに至っては、トラックとギターが驚くほどに馴染んでいたのと、DJブースでの演奏ということもあって、ライブだったって気づかない人もいたんじゃないだろうか。小バコのクラブで時々あるようなスタイル、でもみんな座ってくつろいで、おしゃべりをしたり、お酒を飲んだりしながら音楽を楽しむ。聞けば、これまで富山ではあんまりこういうやり方のイベントはなかったらしい。(すこしおかしな云い方だけど)主催の木下くんが「いろんな場所で、ちゃんと遊んでいる」ひとだからこそできたことなんだろう。

 smougの山内さんは急性胃腸炎を押しての出演。不定形なユニットということなのだが、今回はミニマムな二人編成で。アコギとエレキ、エフェクター、そしてリズムマシンとMPC。丁寧に織られたやわらかい布製品みたいな肌触り。演奏者のエゴがなく、それでいて(だからこそ)音楽自体にアイデンティティのある演奏は、会場の空気にとてもよく合っていた。
 林くんのDJは個人的なハイライト。NHKの「日曜美術館」かなにかだろうか、ニューヨーク在住の芸術家夫妻のインタビューが流れたのだが、話が弾みだし、リズムが出てきたところにキースジャレット風のピアノが絡んで来た、その瞬間のかっこよさといったら!その後もモンドともマージナルともとれない不思議な、それでいて違和感のない世界を、部屋のなかに溶かしこんでゆくようなDJ。総曲輪で民芸品店を営んでいるという林くんは、驚くべきことに、じつは中学校も高校も一緒だった(ひとつ下の学年)と発覚した。できることなら、すぐ近くにこんな面白いやつがいるんだよ、とあの日の自分に教えてあげたい。

 アンコールでsmougに参加していただき、おふたりが奏でるドローンにあわせて不可思議/wonderboyの"Pellicule"を朗読した。ときどきアカペラでやっているこのカヴァー、音がついたのは初めてだったけど、ことばがふわっと舞い上がってゆくような気がして、なんともいえない気分になった。またやりたいなあ。

 終演後もすてきな出会いがあったり、びっくりするような再会があったり、この街でいまほんとうに面白いことが起きているんだと実感させられる夜だった。早く帰ってきなさいよと家族に念を押されたにもかかわらず、結局は京都の頃とおんなじような時間帯まで飲んでしまい、ばあちゃんに心配を掛けてしまって反省。でも、もっと早く戻ってきてもよかったかなと、ちょっと悔しくなるくらいの楽しさだったということで…

 ちいさな街だから、オーガナイザーもバンドも集客には苦労したりするだろう。届けたいものが思っていたより届かないもどかしさ、収支との戦い(遠方からのゲストバンドってお金かかるもんね)、仕事や私生活との両立、どこにいても向き合わなければいけない問題ばかりだけど、情報が伝わる規模も小さくスピードも遅い地方都市では、効力感がなかなか得にくいという話もこれまでよく聞いた。それでも、放っておいたらどうせ誰もやってくれないし、面白いことは自分たちでやるからもっと面白いわけで、義務感でなく、楽しみながら、すこしづつ輪を広げ、点と点、人と人、場所と場所、世代と世代、異なるジャンルのオーディエンス…あらゆるものをつなげてゆくというプロセスこそに可能性がある。ローカルシーンには、コミュニティのあたたたかさや濃密さ、客人(演者であろうとオーディエンスであろうと)に対する誠意と愛、みんながその場所を作るという良い意味でのラフな現場感といった点では都市に負けない魅力があると思う(これは日本中に共通して、そしてももちろん街ごとの個性や差異もあって)。そんな希望にあふれた空気を、一回りも年下の若者にあらためて教えてもらえて、おじさんはとても幸せだ。木下くん、どうもありがとう。


 林くんに「あのピアノが最高だった。どこからとったネタなの?」と聞いたところ、すぐ前でビールを飲んでいる青年を指さして「あの人です」と教えてくれた。その彼―マエダくんという―普段は家具工場で働き、人前では演奏せず、ニュアンスでピアノやギターを耳コピして楽しんだり、ボイスメモでデモを録音したりしているだけなのだとか。すごい才能がいたもんだし、そのデモからひらめきをすくい取った林くんも超ファインプレーだと思う。才能は才能を知るというわけだ。あっ、でもぼくもマエダくんに『ケルン・コンサート』絶対好きでしょう?と尋ねたところ「寝る前はいつも、グレン・グールドとかわりばんこに聴いてる」との返事が。まだこの耳も捨てたもんじゃないとささやかに自己満足である。


posted by youcan at 00:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々、時々雨 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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