2006年07月17日

虹の海(ローカルサーファー)

虹の海を泳ぐ魚達
甘い痛みの夢をみている
遠い昔の無邪気な哀しみを
体じゅうににきらきらと纏っている

泡のように消える日々を飲み込んだり吐き出したり
ゆらりゆらり漂いながら
涙の波間を抜けるまで

いつかきっと この海が満ちたなら
降り積もった過ちの砂の山にも埋もれた優しさは
愛になり
虹になる


昨日 浮かべた地上の星たちを
誰か今日は洗い流してよ
美しい醜いかけがえのない物たち
壊れる前にいっそ沈めてよ

泡のように消えるだけさ
投げ込んだあの指輪と同じ
ゆらりゆらり漂いながら
忘れるときをただ待ちながら

いつかきっと この海が引いたあと
果たせなかった約束の抜け殻は砂浜に打ち寄せて
朝を生み
虹を生む

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2006年06月24日

色相環

赤い錯乱を走らせる午前四時
地球に覆い被さる暗い傘を
なんとかして切り裂き飛び立とうとしては
くるめとられ 落ちて行くばかり
手を伸ばした半径2メートル以内に
ごろごろと転がっている勝利と敗北
惨めさは既に宝石で
宝石はひたすらに惨めだった
夜の星が見えない今夜だからこそ信じてもいい
不粋なほどに核心をつく錯乱
彼女は奇跡的に幸福を掴み
彼はいとも簡単にそれを反古にする
それはそれとして道を逸れた僕らを襲う怖れは避けられないだろう
せめて掠れた声で重ね忘れないように描き
かさかさ黄色いの笑顔を路傍の石に擦りつけて
この荒れた坂道を過ぎ越すしかない気がしている
それもまた僕の赤い錯乱か
いや この傘の下隠された優しさにも似た色彩のすべて
狂った色相環上やるせなさの結晶化した幻のすべてに
たぶん同じルールが適用されているのだが
僕らはそれを名付けられずに手を焼いているだけだ
惨めさは既に宝石
宝石はひたすらに惨め
それでこそ生命そのもののように輝く
もういい少し眠れ 雨に眠れ
晴れに 曇りに 焦燥と困惑に眠れ
目覚めれば相変わらずの退屈な仕事と散らかった部屋と
僕らすべてを出し抜いてしまうような梅雨の晴れ間がある
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2006年06月03日

雨の街

雨の街
雨の街
五月を美しく飾り立てるのが
まるで自分の使命であるかのように
緑を濡らし
アスファルトを濡らし
誰も居ない公園のブランコに揺れる名もなき思い出を濡らし
すり切れた あの雑踏のレコードの音色にあわせて
憂鬱も焦燥も柔らかくかき鳴らし始めている
雨の街

君はこの片隅で
燃えるような想いとはかなく揺れる迷いの灯を
なんとかして消さぬように駆け抜ける方法を思い描いては自ら笑い
タクシーで逃げる話 モノレールで飛行機を観に行く約束
夢物語
受話器を取り上げてはゆっくりと戻し
結局はどこへも飛び出せずにいる

ねえ出会うために生まれて来たのだとしても
また さよならだけが人生だとしても
そんなことはもうどっちだっていいだろう
やがて雨があがり 笑いを忘れた恋人達にも弱い陽が降り注ぎはじめ
傘の花散る交差点の真ん中で僕らがすれ違うその瞬間を
今はすこし信じてみようと思う
雨の街 雨の街
ほら心ゆくまで泳いでごらん
だってこれは果てしない世界の縮図
その中で無限の可能性が漂い続けている


(この詩は5月28日の磔磔にて、ライブ前になんとなく書き、アンコールで読んだのをもとに、ほんのすこしだけ手を加えたものです。)
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2006年05月16日

ウルトラマリン

桜草が美しく揺れ
丘の上 風は春
僕らはまるでほとんど無力で 裸足の夢を走らせるだけ
リヤカーいっぱいに勝利と敗北の旗を積み上げ
歯止めの利かぬ坂道を加速度的に転がって行くだけ
罪を午後に託し
傷だらけの青空を見ては
どこにもない砦のことばかり話している
そこには世界中のあらゆるコンサートホールよりもラッパの音が高らかに誇らしく響く見張り台があり
世界中のあらゆる原子力発電所を集めたよりも強く未来を担うエネルギーを放つ炉があり
世界中のあらゆる孤独な夜明けを収集することのできる地下室のガラスケースがある
未公開の歴史の場面をコンパイルしたフィルムがありその最後はいつも空白で
プラネタリウムから切り取って来たような星空を見せてくれる決戦前夜がありその最後の記憶はいつも曖昧で気が付けば朝を迎え
砦が陥落しそうなまさにそのとき地平線の向こうに見えるあの騎兵隊のぴかぴかに光った銃が最後まで打ち倒せなかったものはいつも同じ憂鬱で
そして君はそこでようやく旅の任務を知り 旅の仲間を知り
旅の意味を知るのだと嬉しそうに笑う
そして煙草に火をつけようとして どうしたわけか止め−
押しボタン式信号を待つ日常を
もどかしそうにいとおしそうに噛み締めたりしている

ねえその一瞬に交差した存在と非在の火花をを誰が見ただろう
神様か この街に古くから住む天使か
そのモノクロの視界に君の他愛無い花火はどう見えたのだろうか


丘の上に今日吹く風は春
桜草が揺れ ウルトラマリンの蝶が低く舞う
相変わらず僕らはまるでほとんど無力
焦茶色の虎猫がウルトラマリンの瞳にやっぱり同じ世界を映している
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2006年03月31日

321

すべての季節の中で今日
ひとがいちばん西陽に美しく映える
ずべての季節の中で今日
ひとがいちばん南風に脆く折れてしまう
安らかでざらついた暮らし
愛おしい落とし穴に満ちた話
交差点で信号を待ち
郭公の鳴き声に軽く息を吸い込み手を繋いで歩き出し
平日の昼間の疎らな街に溶けてゆく
煉獄にも似た春のなかで君はゆっくりと腐り
やがて宝石よりも気高い輝きを帯びるだろう
沈丁花のように懐かしい匂いを放つだろう

変わらないでと願うことはもうやめた
語らないで唄いだすことをいつか覚えた
今はただ息をするように水を飲むように生き
花が散るように鳥が去るように死ねばよいのかもしれない
そう想うのもきっとすべての季節の中で今日
ひとがいちばんすれ違いざま正しく笑い
ずべての季節の中で今日
ひとがいちばん希望のために邪まになれるからだろう
そして君には大切な友だちからの祝福の電話が
僕には語らない新しい唄が
街には春が
訪れるのだった
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2006年03月20日

季節への挨拶

内側からゆっくり壊せ

古くなった殻と 強靭に老いたからだ
締め付ける哀れみと暴力に満ちたまなざしを
抱きしめては畏れ
踏みにじってはひたすらに惜しみ
何ごとも無かったかのように笑い
やがては春の風に乗せて
花びらのように忘れてしまう
大丈夫 それは決して消えず
巡る季節のように君の声に還ってくる
種のように 芯のように 魂のように
何かが眠り
何かが目覚め
気がつけば美しく醜い花をつける
いまはそれを夢見ながら
目を閉じて 壁を 戦車を 王冠を
スローモーションで粉々にしてゆくだけ
僕らそれだけで今日の風を纏い
内側からその時を待とう
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2006年03月01日

・・・という名の街

このビルの上に広がる空が汚いと
いつか言った君を思う
落書きだらけの高架下で君を思う
ちっぽけな僕のちっぽけな目で 足で
張り巡らされた動脈硬化寸前の道路
細菌のような理想と事情と自傷を隣町まで順送りする線路
その網目のどこかに居て 追って 折って
確かめようもないってこと確かめたりしている
そういう君をたった今 思う

三月を目前にした空気はまだ冬にしがみ付き
いらないと思っていた襟巻きを引きずり出して首を縮めながら歩く男たち女たち
暖房のきいた気のきいた避難場所を求めて浮浪者はコンビニエンスストアでパンを眺める振り
すがりつくような目で鳴きながら野良猫が呼びかけるその先には何も無い ねえあいつが見ていたのは何?
沈黙の春は足音も潜め
もう冬も終わりだねって書いた昨日の葉書を僕は無性に恥ずかしく思った

どうか今日は奏でてほしい
まだ聴いたことのないその不思議な響き
高尚な願いからちっぽけな煩悩まで救い上げようとする君の日々の奔走
強がっては前を向き 叙情家ぶって後ろを振り返る僕の日々の停滞
確かめようもないままに放り出したバトンをもう一度拾い上げるまでのその間
僕らを踊らせ 泣かせ 一緒に歌わせてほしい
このビルの上に広がる空
高架下の落書きに残る神様の爪痕
僕はそのどこにだって君を思うから
いま たった今 遮断機が上がり信号が点滅を始める僅かな隙間のような今でさえ
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2006年01月30日

踵の歌

駆けて行くその度に零れ落ちていくのだった
ほら君にはその音が聞こえるかい
無限や永遠を信じない僕らが口先だけで約束することは
せいぜいいつか勝利や栄光や幸福を安く買い叩く権利

いまや時代が変わったらしい
エデンには夜行バスが出て
エデンからは夜行バスが出る
そのくせ2番線で家路につく天使を邪魔するのは解きほぐせない誰かの事情 網状に広がるヒューマニズムの現象たち
自嘲気味に呟いて
まだここにいる
またここにいる
そして踵は駆けて行くたびに零れ落ちていくのだった
君 その足跡が見えるかい
今日は今日と割り切ってしまえばいいと言った
京都は晴 張り詰めた真冬の空気のなかで零れ落ちていくのだった
聞こえるかい
ほら
懲りもせずまた約束しよう
夜行バス待ちの雑然としたハンバーガー屋さんのテーブルで僕ら
豪奢も放恣も優雅も思いのまま
安上がりなジャンクフードで生き延びたこと笑える権利

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2006年01月06日

久しぶりに聴いたその声はまるで
底におおきな穴の空いた言葉の船
すべてを取りこぼし
すべてを沈めてしまう
もうどんな財宝も君の手に入ることはない
僕はただメロディを歌い謡い謳い
ときに息が切れ 声は掠れ 音程を外し
風のような雲のような早すぎる夕闇のような幻だけを運ぶ
Aは黒 Eは赤・・・
そんな色彩の謎をいつかどこかで聞いた気がするのだけれど
もはやそんな秘密の筆を持った偉大な芸術家がどこにいるというのだろう
いまはカラーコピーで本物そっくりの花を写し出せる時代なのだから
ほらいま雪のせいで到着の遅れた電車を待つあいだ
震えと喉の痛みを喜びのように抱いてホームのずっと先の方を探していた
懐かしい人に会いに行こう
懐かしい人に会いに行こう
Uは緑 iは白・・・
僕に真似できるのはせいぜい酔いどれ船でもってこの川を下り
冬の海に凍えては鼻をかみ過ぎて赤くするだけ

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2005年12月30日

美しいものが飽きるほど溢れていた
哀しいものが飽きるほど溢れていた
年の瀬に打ち寄せ ざわめきに野良猫たちが溺れ
地下鉄の出口では若者たちが着飾り待ち合わせ
階段をいざりながら降りる老婆の手にはシュークリーム
それが孤独を癒す簡易な甘さではなく
孫と分かち合う黄昏の滋味であれば良いと願った僕はなんとおせっかいだったろう
ほらそういう日にはそういう風に
そういう世界ではそういう風に
なにもかもが吹かれながら
美しいものは美しい罪
哀しいものは哀しい笑い
水が高きから低きに流れ混ざりあうようにこの街を成り立たせている
そして僕らはその片隅の地下のどこかに迷走するステージを探しよじのぼりすれすれに駆け抜けては転げ落ちる2時間のために今夜ここにやって来るのだ
地下鉄のホームで鋭い空気の針に刺されても
地上に出てすぐ見上げた真冬の青空に迷いごと胸を撃ち抜かれても
けして立ち止まってはいけない
溢れ返る美しいもの哀しいものに窒息してしまわないように
歩き続けなくてはならないのだから
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2005年12月11日

朝の風に

去り行くものを知り
残るものを知り
朝の風にあわせて子供たちが踏むステップは軽やかで
そのくせ世界のどこか、そう遠くないどこかは確実に腐っていて
安らぎはなんて高くつくのかとテレビを見ては嘆き
足りない努力をディスカウントしようなどと猾い考えはすぐに剥がれ落ちていくことも知り
日曜日の午前をつまらない口論で潰してしまうあの夫婦たちの哀しみも
小遣いを握りしめて買いにきたゲームソフトは売り切れでもうすべてに絶望してしまったような小学生の幸福も
舞台裏ですべて滲み出していく排水溝のあの汚水のように淀んだまま
朝の風にあわせて野良猫が踏むステップは軽やかで
朝の風にあわせて僕らが踏むステップは軽やかで
去り行く一切を知り
残した願いを知り
叶わぬことも知り
それでもまた願うのだろう
そのあとで小学生のおばあちゃんがクリスマスプレゼントにと予約していったゲームソフトのように
いつか喜びが朝凪のように
僕らの言葉を奪い去る程に胸を打てばいい
そのときは激しい鼓動にあわせてステップを踏もうよ

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2005年11月28日

航海日誌

鼓動をわすれても呼吸をわすれても
おもったより空気は浅くそう簡単に溺れたりしないと知った昨日に
翻る旗
競い飾り立てた栄光の海 どこへもつながらない大地の海
その船底で冷たく固いパンとチーズを齧る僕らに

大統領がやって来て
パトカーが町中を駆けずり回り
いちども上手に描けたことのない千年の王国に震え
薄くなったビニール袋に目一杯詰め込んだ新生活への期待は道すがら
さながらからからと零れ落ち
すっかり日は短く
引越しは真夜中まできりもなく続いてやっとこしらえたのは砂の城
強い波を前に笑ってた

僕らは呼吸をわすれ
鼓動をわすれ
孤独の厳密な意味を追い求めることもなく
簡単に手に入れた24時間の財宝を賞味期限切れで手放すだろう
そんなことはどうでもよくて
ただ昨日 晴れたそらに空気は浅く その果てでもう少し上手に歌えたら もう少し上手に愛せたらなと
それだけを願っているだろう
この大地の海を渡りたどり着くのはどんなにか豊穣で危険な森か
木と嘘とワインの香りのするあの海賊に尋ねてごらん

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2005年10月31日

petit

たどり着いたのは青すぎる星
地図にもないまま回り続けてる
滅び行くものと生まれくるものが
ものすごい早さですれ違っている

降り立った街角に場違いな意味を求め
見えない井戸を見失ってただ渇いている

生け垣に咲いた無邪気すぎる薔薇
大事なものばかりに引っ掻き傷 抱きしめ傷つけた
棘だらけの指 遂げられぬ想い
時計台は昨日あんなにも残酷に響いていた

言葉よりも確かな夢を編み上げる夜
淡いメロディの上にゆらめくリアリティをただ笑う

そう 物語の続きは霧の中に砂漠の果てに消え
誰かの 君の 僕の胸のうちで根をはり花を咲かせ
種をこぼして大きくなるだろう
わかれの朝が来れば迷いなく身を委ね
眠りの冬が来ればうつくしく枯れてゆく
見届けたそのあとで後で ほら
この青すぎる星を去ろう
地図にないまま 静けさの中 新しい夜明けをいまも待っている
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2005年10月25日

道化の詩

夕暮れを過ぎれば突然やってくる寒さの前
ゆっくりと歩き
訥弁でも構わない
様々な喜びと様々な悲しみの混ぜ合わされた街灯のビーカー
詩は顕微鏡で
錬金術師のように狂った眼差し
酔いどれたあの人はベンチにスポーツ新聞を読む
外は新世界
僕らは旧世界の遺物の城の中
王様の命令を受け ただひたすらに繰り返す幻の研究
ページを捲れどページを捲れど
勝利の方程式は記されておらず
言い訳や嘆きの羅列
ただ迷いばかりが浮かび上がった
夕暮れを過ぎれば突然やってくる寒さの前
ゆっくりと歩き
手探りで得た温もりと引き換えに君は
魔法のような幻惑のような瞬間を望む
外は新世界
出て行く事は容易だ
用意をするならもうこの実験は終わり
あとは残された僕だけがでたらめな歌を歌っていよう
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2005年10月20日

生まれて来なければ良かったのか
青空よ

何一つ浮かばれないままなのか
青空よ

砂糖のように
コカのように
バザールの片隅で売っていた黄金色のコーラのように
ランボーが泣きながら飲んだあの詩の断片

その手で掬うにはあまりに透明すぎたのか
青空よ

笑い、嘲り、罵倒しながら街がけして汚すことのできない
その淡さと深さを今日は信じてもよいのか
青空よ

拳よりも言葉よりも眼差しよりも鋭い暴力を
君はいったい何故そんなにも高く虚ろに掲げ
この星に這いつくばる脆い脆い優しさを眺めているのか
青空よ

ランボーが泣きながら飲んだあの詩の断片
黄金色の西風
今年初めて感じる初めて寒さを分かち合う老人と孫
その後で生まれて来なければよかったと君は言うのか
青空よ
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2005年09月19日

失われた歌を待って

赤い月を欲しがるあの人の歌
青い星を捨てて逃げるあの人の歌
「あと五年で世界が滅ぶ歌は三分半で終わってた」
いつかノートの切れ端にそう書いた
救いが必要だったのは
世界か君か僕か

さらに失われた夜もひらりと越えて
捜し続けるあらかじめ失われた歌
「赤い月を欲しがったあの日あの人あの飛行機雲に」
そう歌ったその時はまさか思いもせず
赤い月が照らす今になって
はっきりと分かる

眠れないなら眠れないまま
見上げてごらん
ゴミ捨て場を漁る野良犬の隣
喧嘩直前で警察官に仲裁される酔っ払いの隣
夜な夜な街中を掃除して歩き
コンビニの駐車場で眠る不思議な老人の隣

そして僕は初めて思う
死にたくないと思う
その途端に胸の内を秋風が吹き抜け
軽くくしゃみをする
骨がまた軋んだ-
祈ろう
まだ終わらないで
解放も祝祭も真夏の夜の夢
泡と消えても構わないから
いまは日々遅くなる朝の訪れを待ち
三分半で終わる悲惨で残酷で燦然と輝く名曲の終わりを待ち
あの人の歌がもう一度響くその最初のブレスを待ち
そうやってただ 見上げてごらん
この赤い月を
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2005年09月07日

無題

強い風に狂わされたのか
新聞紙がひとけ無い街道を転げ落ちるように駆ける
いまその姿は奇妙に哀しく
それがかえって美しかったりもする

使い道の無いかぞえ歌
詩人気取りがひと息に書きひと息に消し
あとは言葉なく叫ぶ
いまや街には貴重な悪意なき破壊 悪意なき馬鹿
そして帰って安らかに眠る

目を閉じ 耳を澄まし
この激しい雨の純度を思う
いったい嵐は天から来るのだろうか
南の海と大地を渡り地の底から来るのだろうか
沈むかもしれない泥の船の夢の中で
弾け飛び舞うトタン屋根の猫のように思う

僕らは決して本当に大切なニュースを知ることは出来ないのだった

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2005年08月29日

ルドン

いったい幾つ数えて
モノクロームのグロテスクな花を
闇夜から救い出したの
いったい何を待って
やわらかく笑いながら流れていくオルフェウスの死を
君は描きだしたの

八月さいごの週末
壮麗で醜悪な人工の冥府の五十二階
光と湿度に気を使われながら守られながら
今日そこにある
瞬間よりは永遠に近くすまし顔で祝福の花火
この塔の下待ち合わせ別れすれ違う僕たちは
いったい幾つ数えて
行き着く先を知らないまま流れていくの

ほらもう日は沈み
ネオンサインの煌びやかな閃光が
ひとつの言葉をバラバラにしてしまう
塔の下待ち合わせ別れすれ違う僕たちは
誰の寂しさも縫い合わせることもできないだろう
君はいったい何を待っていたの
オルフェウスがもう一度戻ってきて
やわらかく歌いはじめるのを信じている

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2005年08月20日

夏への処方箋

蚤が食い荒らしたような幸福感の広がる大通り
誰も悔い改めたりはしない
今日吹く風を確かめたりしない

ただランチの味と 美容院の値段
バーゲンセールを気にかけて
美しく日々を消費する治療の真っ最中

八月の苛立ちをウナコーワで誤魔化してみたり
駈けて行く夢を見かけて独り
独りきりを恐れて立ち止まってみたり

日常は甲子園ほどにドラマチックではなく
つかんだと思ったつかの間の栄光も勝利とはほど遠い
足下の砂も雑菌まみれで記念に持ち帰るほどの代物ではない
老いを恐れ 負い目を縫い
白昼夢の路地を右往左往する僕らの周りでは
もの凄い速さもの凄い味気なさ
もの凄い不条理のままで景色そのものが変わって行く
僕らそのものが変わって行く

ねえ君に言うよいま
季節の風物詩を歌うなら
空腹時に二錠
それよりも過剰にはけして求めないこと
時間と空間の孕む虚無を感じたくなかったら
そっと噛んで飲み下すんだ
そうすれば涼やかで和やかな気分
蚤が食い荒らした幸福でさえも痒みなく羽織ることができる

もう一度言うよほら
空腹時に二錠
それよりも過剰にはけして求めないことさ
悔い改めないことさ
夕立ちはまだ洪水を呼ばない筈だから
方舟でクルージングに来る馬鹿など
この朝にはいない筈だから
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2005年08月16日

夏に捧ぐ

激しい夕立のあとで
吸い寄せられたように歩き出すひと
哀しむ余裕もなく
最後の一声まで声を嗄らす蝉

夏はいつも唐突に終わる振りを見せ
僕らを慌てさせる
始まりにも今日とても
幼さと老いは交わりそれが僕らを急がせる

いつか偉い心理学者が云っていたー
「死について悩むのは・・・」

いまその正しさと誤りがはっきりと分かる
アスファルトが乾けば忘れてしまうだろう
その足跡の消え方
蜩の声の止み方
なにもかも夏らしく出し抜けな黄昏を
ただ生き抜け
posted by youcan at 06:22| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする