2005年07月17日

型落ちの人

別に変わった事など無くても良かったのだ
映したかった言葉の中身を夜が明けるまで
割れた鏡の片身に傾け
顔向けできない世間が知らん顔する様を
ただ横目で眺めていたのだ

別に歌声が起こらなくても良かったのだ
祭りから帰る子供たちの手を引いているのは
混ざり気のない気高いリズム
観たり聴いたり奏でたりする楽しさだけで
ただ生きる価値にすれば良かったのだ

今夜人混みの中キノコ雲の幻の下で開く花を探して
僕は財布を落としてしまった
コンサバティブな価値を呼吸する型落ちの人
幸せを並び替えただけさ
愛想笑いもアイスキャンディーも買えない掛替えのない今日
騒いだ間に誰か拾い上げて開いてほら僅かばかりの馬鹿げた額を快楽にも博愛にも使っておくれよ
それで僕は潔くいかにも巧く諦めた素振りで
怒りも込めずその日を振り返ってみせるから

別に変わった事もない回りかたで回る地球
片隅で交わす未来への会話 悪意なく飽くなき奪い合いは続く






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2005年06月19日

さかさまのソネット

六月某日

あの人に捧げるソネット(それはソネットでなくてはならなかった、どうしても)を幾つも幾つも書いたのだけれど、
夏時間にも成り切らぬクールビズの空気圧と観光客ばかりのカフェテラスの喧噪に馬鹿にされたかのような気分では碌なものができるわけもなく、やっとの思いで西日の中から拾い上げた駄作を足跡として残す。


午後の日差し溢れる広場で;
子供じみた幸せだけで;
僕ら 満ち足りたかもしれないな

来ないかもしれない希望を;
昨日も今日も行儀良く待った;
捕まったのは僕らかもしれないな

いまは山吹色に染まる
約束の橋へ独り向かう;
たった一枚の絵と引き換えに
永遠を買おうというのか;

見つけたものが何だったのか
いつか試しに奏でてごらん;
それは
やがて夜のカフェテラスに
くっきりと 浮かび上がるだろう;


そこで僕はノートを畳む。韻律を整え、イメージを膨らませ、もっと強い言葉を探すべき時間を前にして、けれどこれ以上は無益で、冒涜でさえあるような気がした。
外は初夏の遅い夕暮れを待ち、そこはかとない渇望と無関心とが渦巻きはじめ、その裂け目の中でひとかけらの郷愁が輝いたりする。
ああ、こういう傷跡のような空気のなかでそれを描いたのかもしれないと見上げた空に、あの絵の中の様な鴉の群れ。
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2005年06月14日

ブローティガン、それから地の塩

最初の陽をひとひ
人々の涙を拾い
その塩の結晶で僕らは凡てを造る
歓びも憎しみも
弱すぎた慈しみも
この塩の結晶で僕らは全てを創る

やがて太陽が昇るたびに世界は色を変えてゆくけれどー

放った理想が喉元を焼き
流した血はそこに影を残し
もう戻れない物たちのモニュメントは
しょっぱい手触りでここに在り続ける

黙示録のなかの目次に迷う
アメリカの鱒釣りと愛の行方の間の子どもたち
せめてその声だけは
もう少し甘いままでいさせてよ
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2005年06月07日

伝言1

創るには
技術よりも何が必要か
知らないか

足りないものは埋めてはいけないのかも
しれないな

向き合うためにすべての力を使うなら
鏡の様なこの世界では
視線に晒された僕らはゆっくりと乾涸びて行くしか
ないのかな

ギターと、ペンと
激しくて虚ろな焦燥は
どれほど重ねてもやがて冷めていくだけ
ねえ それよりも どうか温かいスープを
分かち合うためのスプーンを君には携えていて欲しい

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2005年06月02日

dessin ; about a pocket

裏通りを泳ぐように
その向こうに広がった午後へ
軽い目眩と葡萄の飴をポケットに入れて

君は言ってた
絶望よりもきっと速く走れるはずだと
あの横顔と夏の予感をポケットに入れて

いま街の隅から隅を覆う暗闇
焦りと怯え 声にならない叫びを立てて
やがて線路際にうずくまる野良犬
その虚ろな視線さえもポケットに入れて
泳ぐように ただ鮮やかに光を湛えた午後へ

泳ぐように




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2005年05月10日

五月雨の前

五月雨の前に
川沿いの並木は燃え上がるほど碧く変わり
五月雨の前に
街じゅうを彩る躑躅の花が溶けて流れ
五月雨の前に
ほんの少し温度の下がった風を受けて
帰り道を急ごう

個人的な傷みのことだけ
それだけを歌う
個人的な愛のことだけ
それだけを歌う
それだけで世界に在る
随分と時間が経ってしまったけれど
今日 あのひとには傘が有るかな

五月雨の前に
素晴らしい詩を一篇だけ綴る時間を
ひと口だけ紙コップの珈琲を啜る時間を
ただぼんやりと待っているのだった
ねえ いまはそれで構わないのだろう

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2005年05月05日

遊泳都市

酸素と水とざわめきの街
路地裏から生まれたままのシンフォニー
線路沿いの落書きにも白い月が昇り
僕は出かける
いまは響きだした予感だけを信じる

遮断機を潜り抜け
幾重にも閉ざされた胸のうちから
栄光まで2000マイルの荒野まで
今夜
永遠に待ちぼうけの あの犬を連れて行く

乾いた風が全部知っているのかもしれない
世界が胸を痛める朝
いつか窓際に捨てられた午後
そして今夜

永遠に待ちぼうけのあの犬を連れて行く
闇の中を溺れないで向こう側へ渡るために
酸素と水とシンフォニーの中
僕は出かける

君も一緒に来るかい

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2005年04月27日

讃月歌

ひかりに向かう日は終わり
ひかる時を待つ
眠れない夜 退屈な夜
世界中のどうしようもない夜を集めて
燦燦と 燦燦と笑ってみせる
月の白さを今は信じ
誰も探さない午前3時
世界中のどうしようもない憂鬱の中で
燦燦と 燦燦と笑ってみせる
友達よ
三億光年の彼方にいても五分で逢いに行ける
愛すべき友達よ
もう語らずに
もう悶えずに
いまはただ描く時が来たのだと思う
感情よりも確実に届く栄光のビジョン それは戦場を越え 廃墟を越え
街中を躍らせたあの残酷なニュースを越えて
ここにない王国の影を
けしてやって来ない王国の影を
僕の指先に 喉元に 浮かび上がらせる
ねえ どうか たった一度だけでもいいから
一緒に来ては呉れないか
ひかりに向かう日の終わり
眠れない夜 退屈な夜
そこに僕と立っては呉れないか
そしたら―ほら あらゆる星の 月の
春の風の白さを集めて 笑ってみせる
誰よりも上手に 燦燦と 燦燦と笑ってみせるから

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2005年04月14日

京都

とこしえ迄はあと数歩の春だった。
街角で売るさよならそしてこんにちは、
すべて楽しげに謳っていた。
偶然ではなく
すべてがその術を知っていた。
歩道橋の上へ上ったらこの日常を囲む山の麓に、
すこしは兆が見えると思っていた。

小さな川の縁に流れ着いたビール缶を見る。
この瞬間の感覚は寒いのか生暖かいのか既に分からなくなったままひたすらに歩くような
それでいて何処へも繋がらないと気付いていたような
そして僕はとりあえず震えてみせた。

1200年目の4月の束の間の夕陽。

大丈夫
今でも僕は君を連れて行く積りでいる。
とこしえ迄はあと数歩だとずっとの昔に知っていたのだった。

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2005年04月11日

春の雨に

可能性の蕾はもう失い
終わりの美学にはまだ辿り着かず
ただ危うい危ういバランスの、アンバランスの上に
咲き誇るだけ
あの若い、あたら若さを無駄に潰す遊び
ゆるやかに腐ってゆく青春の自殺者の群れにも似て

これだから四月は
無邪気すぎる、って言うんだよ
残酷な物語を語りさえせず
ただ花弁だけが饒舌で

ほらやがて雨が降り始めたら
その下に何が埋まっているとか
さよならだけが人生だとか
そんな古ぼけた本はもう伏せて
傘をさして出かけるだけ
春の雨に撃ち抜かれて
今日は負け犬のように濡れて帰る

生きているって、気づく

アスファルトに散りばめられた桜を踏み越えて今日は帰る

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2005年04月05日

歩道橋から

さて この情熱とやらに果てがあるのなら
僕はそこまで這いつくばってでも行って
その先には
どんなに荒涼とした あるいは見晴らしの良い
どんなに味気ない あるいは清々しい景色

広がっているのか
確かめて

やろうという気にさえなるのだった

歩道橋から春の西日までは あと何歩だろうか

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2005年04月01日

今日の説話

今日は血を吐くように愛すること
三日後には嘘でも良かった

花のようにすべてを許し
ときに居汚く萎え、
ときに潔く散る

たとえ、どちらがより真実か
分からなくなっても
ページを捲り
葬られたラザロに会いに行く

血を吐くようにすべてを赦すこと
三日後には嘘でも
奇跡でも
悪魔の誘惑だったとしても
この生ぬるい風のなかでゆっくりと思い出すだけ
それだけで良かったのだろう

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2005年03月26日

プラットホーム

また会えるとは言ってみても
いまさら流線型の出発なんて
結局は結構な滑稽
哀しさを流しただけなんだって

僕は無闇に銀色の柵に寄りかかり
味気ない顔で見ていて
真ん前
まったく視線の対角線上で ふたりは手を振り
魚が綺麗にターンするみたいにして離れていった
僕はまだ見ている

そこで交わされたことばが
約束だろうと建て前だろうと
どうでも良かったらしい
だって
30秒後にはその速さにも似合わないロウファイなサイレンの音が
全てを運び去ると知っていたんだから

それにしても
いつだったか白い別れと呼んでみたその日とは似ても似つかぬ寒い午後だったけれど
結局は同じ 白い陽射しがちらつく雪に変わろうと
結構な滑稽
目を細めたその列車はただ何か笑いに似たものを
流しただけなんだって

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2005年03月24日

さっき

雨上がりの空、鴉の濡れ羽の色した東の空
その下に立つ古いビルディングが
劇画調の世界の終わりのように橙色に描き出された

交差点をわざわざと渡り、振り返って見れば
懐かしいほどの宝石めいた斜陽が車の流れに溶けていく

停まれ、これはどんな信号機よりも
どんな道路標識よりも
確実に君を想っている

雨上がりの空、何を急ぐことがあるだろう
この古都の郊外に立つ人びとのわずかな時
劇画調に気取ることも無い僕らの
橙色に縁取られた影

誰に見せるでもなく輝くものを蒐める鴉
空き地の土管の中?
廃車置場のオートバイの傍?
この頭の中だけで鳴り響く聴こえないメロディの中
交差点をわざわざと渡り、振り返ってみる
斜陽はまだ尽きない、
そして僕は確実に君を想っている

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2005年03月16日

ライラックの夢

ライラックの夢
言い切った嘘よりも強い願いの中で
ホイットマンの残した蒼くたおやかな詩の中で
ただ分かったって気になっているだけ

支えあっている積りが
もたれかかっていただけたって
分かったら後は構ってないで行く
明後日にだって変わってしまう全世界の地図を届ける
大丈夫、ここにはきっと戻ってくる
この日とこの人
ひとしきり想ったひたむきな西陽の歩道橋
ただ分かったって気になっているだけだって

花屋の店先に咲き誇るのは
ライラックの夢

狂った月曜の風が軽く胸の奥底を弄り
さらってった唯の気分 叩き続けるリズム
僕は笑ってた
バスが来るその間
ホイットマンのたおやかな詩のなかですこし泳いで行こうか
言い切った嘘よりも強い願いの中で
ただ分かったって気になっているだけで
どんな歌を歌って聴かせようか

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2005年03月04日

candied

狂ったキャンディを口にする
金曜日の朝、白い西瓜糖で出来たキャンディ
その甘さは小説のように虚構じみて他愛もなくて
そしてすぐに溶けてしまう気がして
春雨の中、大根役者にもなれないまま濡れて行こうと思う

僕は書く
僕は歌う
僕は笑いかけて

優しさが何か、今はまだ分からなくていい

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2005年03月01日

寒さの実

食べられないのだ
吐き出すだけだ
この果物は あまいあまい寒さの実

二月最後の晴れた夕方
かわるがわる話しているのは

とりとめもなく歯止めも利かず
気まぐれに回り続ける運命とか

傷つけるなら誰でも簡単に

赦されないまま許すことを願い

満たされても満たされてもその傍らからまた零れ

いまもそうしてもぎ取り続ける
あまいあまい寒さの実ばかり

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2005年02月24日

ある感受性に

いつか話したあの黄昏に花ひらく優しさ
似つかわしさは疾くに失せ
ぎこちなく手を差し伸べる意気地もないモンスターのように
積み上げるほどに崩れ落ち
抱き寄せるほどにすり抜けていく
そんな日々さ
春を待ち
春を憎み
遥か遠く来たるべき夜に怯えながら
僕は君を愛した
夕暮れの時計 いま針の歩みを止めて
どうか花をもう少しだけこの胸に咲かせていて欲しい
積み上げるほどに崩れ落ち
抱き寄せるほどにすり抜けていく日々も
一粒の麦を確かに零して
僕らの中に在り続けている
いつか話した
いつか話した
あの黄昏に花ひらく優しさのために
僕はすべてを犠牲にしても良い
春を待ち
春を憎み
晴れ渡る二月の苦い青空を見ては
はにかみながら意気地もないモンスターは呟くのさ

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2005年02月22日

箴言1

僕らは影
僕らは鴉
僕らは闇に縛られたダイダロスの子どもたち

だから進んでいく、あの狂った太陽を目がけて

寒さに翼を痛めて
焼き尽くされる夢に焦がれる

さよなら、幻惑だけの冬の日よ

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2005年02月18日

sang (#2)

お飲みよ 僕の血は光と影の味
総ての空の朝焼けを集めたよりも甘い
祈りがあと少し遠くへ響いたら
真夏の夜の夢の痕 目を覚ましていられる

お飲みよ 僕の血はネオンサインの海に
鏡の底に沈んだ珊瑚礁の路地裏に
汚れた顔を拭うタオルと
踏みつけて歩く履き慣れた靴と
斜めに被る茨の冠 眩しい朝に消えても

明日そのときが来たなら 僕らは何を話そう?
約束の朝が来たなら僕らは何を許そう?

お飲みよ 僕の血は腐った知恵の実から搾った真っ赤な微笑み 世界をやがて酔わせた
お飲みよ 僕の血は光と影の味
総ての空の朝焼けを集めたよりも甘い

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